親が子供を養育する場合、育てていく義務がある

親が子どもを育てるという一見当然と考えられる行為が、現在の社会ではどういう理由からか実行されないこともあり、育児放棄事件が新聞種になっています。
 ここでは、親が自分の子どもを育てていくということについて、法律がこれに対してどのような考え方、すなわちどんな規定をおいているのかをみていきましょう。
 民法では、正式に結婚している夫婦の間では、貧しいときでも、病に倒れたときでも、夫婦が助け合い、最後のパンの一片までも共に分ち合って生活していく義務(生活保持義務)をお互いに持つことを定めています。
 そして、この生活保持義務は、夫婦間だけではなく、原則として共同生活を送る未成熟の子も含まれます。
 これは、子が親を扶養する生活扶助義務以上に強いものです。後者が、自己の生活を送り余裕があれば扶助する義務を負うのに対して、前者は、どんなに貧しくとも共に生活を送っていかなければならない義務です。
 この子に対する義務は、親であるかぎり、夫婦が別居していても、あるいは離婚するに至り、別々の生活を送るようになった場合でも、なくなるものではありません。
 たとえば父親が賭け事に夢中になり生活費も渡さないという場合は母や子は生活保持義 務を履行せよという形で、家庭裁判所にその履行を申し立てることができます。
 ここでいう未成熟の子とは、経済的にみずから独立して生活費を獲得することを期待できない状態にある子で、いちおう満一八歳くらいまでと考えられています。

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未成熟の子どもは、誰かがその養育(身上監護)を担当しなければなりませんし、子どもに財産があればこれを管理してくれる者を必要とします。そして、その責任を、以前からどこの国でも親の手にゆだねてきました。
 民法では、子どもの身上監護、財産管理をするという親の地位を「親権」とよんでいます。すなわち八二〇条で「親権を行う者は、子の監護および教育をする権利を有し、義務を負う」というように規定し、これが親の権利であると同時に義務であることを定めています。
 この親権者には、父母が結婚している間は共同で親権を行なうことになっています。また離婚の場合は、どちらか親権者になるかを定めないと、離婚屈は受け付けられません。
 このように、つねに親権者がいるように定めて子どもの保護育成を図っています。
 ここでいう監護および教育は、単に養育ともよばれ、子どもの心身の育成に必要ないっさいの行為を合みます。
 ただ一定の事由のある場合には、親権は公的な制限を受ける場合があります。たとえば義務教育のための入学の場合、犯罪を犯した子に対する保護処分、刑事処分などの措置がとられる場合などです。
 つぎに身上監護に属するものに何があるかをつぎにみていきます。
 (1) 子の引渡請求
 親権の行使を妨害する者があるときは、親権者はその妨害の排除を請求することができます。しばしば問題になる例に、第三者(たとえば監護権のない離婚した妻など)が子ども連れて行って帰さない場合があります。
 (2) 懲戒権
 親権者は、子を養育していくために、必要な範囲内で、その子に懲戒をすることか許されています。よく新聞などに行き過ぎた懲戒の事件が出ていますが、限度を越えた懲戒は親権の濫用として、親権喪失の理由となるし、暴行、傷害、逮捕監禁などの刑事事件として処罰されることもあります。
 (3) 身分行為の代理
 親権者および後見人は、子どもの身分行為については、法律に明文の規定のないかぎりは代理権および同意権の行使は認められません。身分行為とは、婚姻、養子縁組みあるいは認知など子どもの身分に関する行為をいいます。明文の規定のおかれている例としては、認知請求、一五歳未満の子の養子縁組み、未成年者の生んだ子に対する親権の代行などがあります。
 (4) 職業の許可
 未成年者は法定代理人(親権者または後見人)の許可がなければ、職業につくことはできません。これは職業許可権といわれるもので、職業につくことは、未成年者の身上や財産に大きな影響を及ぼすので、これを保護するために、その子の能力や適性をよく知っている親権者の許可を必要とするとしたものです。未成年者の労働については、民法とは別に労働基準法により、未成年者保護の規定がおかれています。
 満一五歳未満の児童を労働者として雇うことは禁じられています。これに違反した使用者は一年以下の懲役また は一万円以下の罰金です。ただしこれには例外があり、非工業的事業で、児童の健康および福祉に有害でなく、軽易で、かつ児童の修学時間外に使用する場合は、満一二歳に達していれば許されます。もう一つの例外は、映画や演劇のためならば、満一二歳に達しない児童あるいは幼児でも使用できます。いずれの例外の場合にも、この要件を満たしているかどうかを労働基準監督署長に事前に審査してもらい許可を得ることが必要です。
 満一五歳以上満一八歳未満の者を危険あるいは有害な業務に使用することは禁じられています。違反した使用者は六か月以下の懲役または五〇〇〇円以下の罰金に処せられます。
 以上のような制限に反しない職業につく場合(アルバイトを含めて)、親権者の同意がなければ使用者と労働契約を勝手に結ぶことはできません。同意を得ないでした契約は、親権者が取り消すことができます。
 また、親権者が、同意して有効に労働契約が成立しても、職場の環境の変遷や経済状態の変動などによって未成年者に不利であると認める場合、あるいは未成年者がその労働に耐えられないような事情がある場合、親権者には、この契約を将来に向かって解除できる権限が与えられています。
 しかし、実際、アルバイトなどのような短期間の労働の場合、一七、八歳くらいになれば未成年の子が単独で契約を結び働いているという例がほとんどで、この規定の趣旨は生かされているとはいえないのが現実です。
 (4) 子の不法行為の責任
 子どもが故意に、あるいは過失(不注意)によって他人に損害を与えたときその子に、その行為をすることによってどんな責任が発生するかを認該できる能力(これを責任能力といい、一二、三歳くらいから認められます)がない場合には、その子の法定代理人である親権者は、監督義務者として、損害賠償の責任を負わされます。ただし、その場合に親が、子どもの監督を十分にしていたということを証明すれば、責任を免れることはできますが、裁判でもこの免責はなかなか認められません。

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