養育するのが困難な場合

たとえば、病気の夫が長い間、入院しているとか、寝たきりであるために、妻も看病疲れか原因で倒れてしまったという場合、その夫婦に幼い子どもがいれば、子どもの養育ということか事実上困難になります。
 この例ばかりではなく、子どもを養育できないという生活事情は、いろいろの理由から起こってくると思います。
 そのような場合、一般に考えられることは、夫の親兄弟、あるいは妻の親兄弟といった親類縁者の誰かに、その子を預けて養育してもらうという方法です。
 また、夫は病気中でも妻に働く体力や能力があれば、子どもを誰かに預けて自分は働いて生活費を稼ぐという場合もあるでしょう。
 いずれの場合でも、子どもを親類縁者や第三者に預けるとなると、親権者であり、監護、教育の義務を負うべき親は、その本来の義務を尽くせないことになります。このような場合、法律はどう考えているのでしょうか。
 以前は、子どもの養育を第三者に委託するというような契約は、身分権の一部譲渡ともいうべきもので許されず、そのような契約は無効であるという考えもありました。
 しかし現在では、児童福祉法でも、児童を里親に預けたり、保護受託者に養育を委せる制度が認められているように、子どもの福祉に反しないかぎり、第三者に子どもを委託する契約を有効として扱っている判例が多くなりました。
 以下、この養育の委託契約についてみてい きましょう。
 養育委託契約は、親権者(監護者が別に指定されている場合は監護者)と子どもを預かる人すなわち受託者の合意によって成立する契約です。ですから、どのような監護教育をするか、いつまで預かるか、その間の費用の負担といった契約の内容は、子どもの福祉に反しないかぎり、自由に当事者間で話し合って決められることになります。
 この養育委託契約は、約束した期間がきたとき、話合いによる合意解約、委託された子が成年に達した場合あるいは死亡した場合に終了します。
 問題となるのは、委託者である親はこの契約が存続する間、いつでも契約を解除できるかどうかです。
 判例はこれを認めています。ただし、契約を解除し子の引渡しを請求することが、明らかに子の福祉に反するという場合には、この解除権は認められません。逆に、子どもを引き渡してくれと請求しないという内容のことを契約に織り込んでも、このような契約は公序良俗に反し無効なものになります。

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子どもをかかえていては生活がやっていけず、また、親類とか子どもを預かってくれる知合いのない場合には、どうすればよいでしょうか。
 よく生活に困ったあげく、公園などに置き去りにするなどの話がありますが、いくら困ったからといって我が子を棄てるというのは言語道断です。
 そういう困ったときのために、社会福祉施設か設けられているわけです。
 その一つが生活保護です。憲法二五条で、私たちは誰でも健康で文化的な人間らしい生活を営むことができる権利を持つことを規定しています。これを受けて制定され、困った人の生活を保障し、自立を助ける法律が生活保護法です。
 つぎに、子どもさえ預かってもらえれば、働けるという場合の施設として保育所があります。
 保育所に子どもを預けたいときは、市と特別区の場合は社会福祉事務所を通じて、町村の場合は町村役場へ行って申請すればよく、市区町村長としては、保護者(親権者など)の仕事や病気などの理由で、その子どもの「保育に欠ける」と認めるときは保育所入所の措置をとる義務があるわけです。
 また、児童福祉法による認可を受けた保育所が付近にない場合とか、あるいは認可保育所が満員などという場合でも「その他の適切な措置を加えなければならない」と児童福祉法二四条は定めていますので、無認可保育所へ入所の措置をとれといった要求をすることもできます。
 つぎに保育所の費用ですが、これは親の負担能力に応じて支払うことになっていますので、生活が苦しければ、それだけ納める金額は少ないことになります。
 保護者がないとか、あるいはあっても、子どもに乱暴を働いたりなどするため、保護者のもとでの監護では、かえって子どものために不適当だというような事情がある場合には、誰でもその旨を福祉事務所や児童相談所に通告することかでき、これを受けた知事、指定都市市長(通常は委任を受けた児童相談所長)は必要に応じて、その児童のために、よいと考えられる併設をとることが要求されています。
 たとえば、子どもが乳児であれば乳児院へというように、その子どもによって精神薄弱児施設、盲ろうあ児施設、虚弱児施設、肢体不自由児施設、重症心身障害児施設などがありますし、乳児を除いて、保護者のない児童、虐待されている児童、その他環境上養護を要する児童を入所させる養護施設もあります。
 施設以外にも、その子どもを里親に預けたり、保護受託者に委託する制度もあります。
 このように、現在は、社会福祉の向上が、各都道府県で図られていますので、本当に困った場合には、都道府県や市区町村の相談所や社会福祉課、あるいは児童相談所などを訪問して、相談をしてみれば、何とか解決の道が開けることと思います。

親が子供を養育する場合、育てていく義務がある/ 教育を受けさせる場合/ 養育するのが困難な場合/ 子供が連れ去られた場合、引渡請求権を行使する/ 養子をむかえる場合/ 子どもが生まれた場合/ 胎児と子どもの権利/ 結婚前に生まれた場合/ 結婚外で生まれた場合/

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