知性と創造性

知、情、意といった機械的区分は、発達途上の幼児にはうまくあてはまらないようです。子供は、むしろ、好きこそものの上手なれということわざに軍配をあげねばなりません。子供の知性は、大人のようにはまだ固まっていないのです。
 幼児に知的教育は不向きだという主張については、日本の幼児教育界では実に根深い考え方をなしています。幼児には、社会性の教育あるいは情操教育こそふさわしいので、知的と名のつくようなものは一切いけない、これが幼児教育界の指導者の多数意見であるようです。アメリカでも、古い型の幼稚園は、社会性の育成とか遊びの場を与えるとかの趣旨に立っているようです。この点、日本と少し似ています。
しかし、この主張は一部は、知的とか教育とかについての誤解に基づいているようです。教育といえばすぐ、つめこみ、言語万能主義による集団授業などを思い浮かべるのは、姶めにのべた既成の先入見にすぎません。知的といえば、情意機能から切り離された血の通わない断片的知識を連想するのも、同様です。情操教育論が、一部のいきすぎを正そうとする気持には同情しますが、先入見を一歩もでようとしないのは、狭すぎるのではないでしょうか。
知能は、健全な性格に支えられてはじめて有効となります。知性と他の諸性能との有機的な相互関係は、知性がIQとしての知能という狭い限界を離れれば離れるほど、ますます問題となってくるのです。

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ワルラックとコーガンという二人の心理学者が共同で、「児童の思考様式について」という本を書きました。彼らは、児童における創造性の研究を行なったのですが、その底には、すべての子供は創造的能力かもっているとレう仮定が潜んでいます。大人になると、とかく創造性は失わかがちですが、純真素朴な目で世界を眺めている子供のなかには、常に何かを発見する可能性かおるというのでしょう。課の王様を見破るものは子供の目であったことが思いだされます。
では、創造的な子供とはどんな子供でしょうか。ただ、IQがたいへん高いだけでしょうか。それとも、何か別の特徴をもっているのでしょうか。これをみるために、コーガンたちは、創造性のテストをつくりました。
もっとも、このテストは、彼らのまったくの独創によるものではなくて、それ以前にギルフォードらによって作られていたものを取り入れ、手を加えたものです。どんなものかといえば、原則的には、連想の豊かさと独自性とを測ろうとするテストです。
創造性とは、思いがけない可能性をみつける能力ともいえるでしょう。もちろん、それだけがすべてではありませんが、少なくともそのような一面は含んでいなければなりません。いいかえると、ありふれた事物に対して、とんでもない使い方とか性質とかを思いつく能力などは、創造性のある一面を示すと考えられます。これを、心理学では遠隔連合といいます。コーガンらのテストは、遠隔連合の量と質との測定にむけられます。
例えば、用途テストといわれるものがあります。これは、針金製のハンガーのような日常の事物に対してどんな使いみちが考えられるか、できるだけたくさん答えるテストです。ここで、引き延ばして針金に使うなどというのはありふれた平凡反応であり、創造的な答にはなりません。しかし、これらを組みあわせて草月流のオブジエにするなどというのは、もっと独特な個性のある答ということになり、高い得点が与えられます。
こうして、五種の創造性テストが考案されました。各々について回答の量と質とが得点化され、結局一〇種類のデータが得られました。これらの成績は、お互いに相関が高く、かなり良く平行していました。ですから、創造性と名づけられるような知性の一つのまとまり、タイプがあるのだろうと考えられます。
一方、同じ子供たちに対して、三種類の代表的な知能テストと学業成績テストを行ないました。これらの成績も互いに良く平行していたのです。
しかし、創造性テストの成績と知能テストの成績とは、互いに無関係でした。一方で成績が良くても、他方で良いとはかぎらないわけです。ですから、もし、上の諸テストが正しく知能および創造性を測ることができているとすれば、この二つの知性の型は、まったく別物だということになるでしょう。
ギルフォードは、アメリカの優れた心理学者であり、早くから創造性の研究に着手していた人ですが、彼もやはり、知能と創造性とははっきり異なるという見解をもっています。ギルフォードのことばを使うと、知能とは、集中的思考の能力を示すものです。ここに集中的思考と呼ぶのは、筒単にいうと、答が一通りに決まっているような課題、あるいは、できあいの解決様式がすでに与えられているような問題を解くときの思考様式です。算数の計算とか書取りとか知能テストなどは、その典型的なものといえるでしょう。
一方、創造性とは、拡散的思考の能力だといわれます。拡散的思考とは、集中的思考の対になるものであり、ありきたりの解決法は必ずしも与えられていない問題、どう解こうが自由な問題、解き方そのものを工夫しないとならない問題、これらを解決するときの思考様式です。ですから、これには唯一の典型的な回答はありえませんが、発明や発見には拡散的思考様式が基礎になるといいます。

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