幼児の言語教育

幼児が、日々の生活の中で、親や大人の助けを借りて母国語を覚えて行く過程は、あまりにも日常的な、ごく自然なものであるため、親やまわりの大人は、とかく、その過程を、子供の成長にしたがって自然にあらわれてくる現象だと思いがちです。しかし、動物の中で育った少年やはその間に言葉を覚えることがなかったという例からもわかるように、言語を獲得していく過程は、生得的に規定され、それに基づいて経過するものではありません。また、幼児みずからの力だけによって生じるものではありません。他のすべての学習、発達の場合と同じく、母親やまわりの大人の絶え間ない日常的な教育的な働きかけと援助の下で、はじめて、幼児は言葉を覚え、その正しい利用の仕方を学習していくのです。

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出生してから数年というごく短い時間に、幼児は母国語の基本を習得しますが、その習得過程は、成人してからの外国語の学習過程とちがって、きわめて独特なものであり、言語の重要性と関係した次の特質をあげることができます。
この期の言語の学習過程は、同時に、人間に特殊で本質的な言語使用能力の形成過程であるということ。
この期の言語の習得は、他の精神機能の発達と不可分に相互作用していること。
とりわけ、語の習得、文の形成機能を得ることは、事象を社会、歴史的カテゴリーで知覚、認識する能力の形成を促し、保証していること。
この期の言語収得は、また、感情の分化と形成、意思と意識の形成等、全人格の形成に不可分に結びついていること。
学習の結果得られた言語諸能力は、まわりの人々と交際し、間接的に事象を学習する新たな手段となること。
この時期に、正しく十分な言語指導を行ない、幼児に豊かな言語能力を育て、その形成を保証することが、この期の教育の中でとりわけ重要な住設を占めているのは、また、このような理由によるのです。
では、幼児期に、どのようなことを目標にし、どのように指導することが必要であり、かつ望ましいのでしょうか。子供が言語を習得していく過程についての発達心理学、教育心理学的知見にもとづいて、幼児期、特に三歳代より就学を迎えるころまでの期間の、家庭や園での言語指導、言語教育の目標、あり方について述べてみましょう。
子供の言語活動は、まず、大人その他の相手に対面して言語的に伝え合う対話、会話という形態ではじまります。この期の言語教育の大きな目的は、何はともあれ、生活のありとあらゆる面で、幼児の主体的なこの活動を組織し、活発化させ、その活動の中で、母国語を正しく使用する能力と習慣をつくり、母国語の正しい担い手、使用者にさせることにあります。三歳を迎えるころまでに、幼児は、すでに二〇〇〜四〇〇の語いを習得し、文法的にも正しい、基本的な単文をつくり出すところまで達していますが、もとより、その能力は、まだ貧弱なものです。対話の場面で、相手の言うことをかなり理解し、かぎられた範囲で言葉を利用し、自分の意図を表現できるにせよ、なおその言語使用は、場面的であり、状況的なのです。このような段階から、豊かな語いと母国語の文法的規則の基本となるすべてのルールを正しく操作し、日常の場面で、大人と何不自由なく話し合える、という段階にもっていかなければなりません。
そのための指導のもっとも重要な留意点は、日常の生活の中で、子供が言語を利用して表現する機会を積極的、意識的に作り出し、子供の言語活動を促し、その言葉のやりとりの中で、子供の不十分な表現を適時直してあげる、ということです。この指導は、子供の言語能力の発展にとって実に不可欠のもので、たとえどんなに忙しくても、親は一日三〇分位は子供と一緒に絵本を読むというような態度をとることが望ましいのです。また、同年齢もしくは年上の子供たちと共同の生活をし、遊ぶということは、言語活動を盛んにするために必要なことで、ひっこみじあんな幼児には、このような場面を与えるなどの配慮も必要です。

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