言語を理解する能力

日常の場面で、親やその他の人を相手として会話ができても、自分が経験したことや意見を、筋の通った、まとまった話として話したり、長い話を理解することは、三、四歳の子にはなかなか困難です。対話的な言語能力の発展として、この種の言語伝達能力をつくり出すことは、就学前の、特に五、六歳児の言語指導の目標の一つになります。筋の通った話をするということは、大人の場合でもそうですが、あらかじめ一定のプランをたてるということが要求されるため、対話よりはるかに難しいのです。したがって、例えば、前の日曜日に動物園に行ったとしたら、はじめは、対話の型で、その経験の断片をひき出し、次に少しまとめて言わせるとか、その経験を何枚かの絵に書かせ、次にその絵を見ながらお話をつくらせる、という指導をとるのが普通です。また、物語を聞かせ、それについて対話の形でいろいろ質問口答えを行ない、次に、今の物語をまとめていわせるというのも、この面の指導として役立ちます。話すこと、間いて理解することも、そうせっかちに指導するのではなく、長期的な計画にもとづいて行なうことが必要です。

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一般に三歳ごろまでに、幼児は母国語の基本的な音韻を習得し、相手に誤解を生じさせない程度に語を話すようになりますが、しかしなお、四、五歳児に、困難な音韻は未習得て幼足音が残ったり、長い音節の語に脱落や言換えが生じたりすることは、稀ではありません。日々の生活の巾で、そういう場合に正しい見本を示し、訂正させたり、必要な場合に完全に正しく発音ができるようにすることが必要です。
日常の会話および筋の通った話をするという活動の中で、日本語の基本的な文法のルールを学習し、文法的に正しく話せるようになることは、この期の言語教育の大きな目標の一つとなります。五、六歳になると、かなり複雑な構文までつかえるようになりますが、まだ、主語が脱落したり、「は」格、「を」格、「に」格等の格表現があいまいで、省略したり誤ったりすることが少なくありません。また、受身、使役、授与構文、仮定表現等は完成していません。一般にこの期には、文法を規則として教えることは困難ですが、年長になったら、基本的な文で、事柄と結びつけながら格の表現を意識化させたり、不十分な構文は意識的に指導するという態度が望ましいのです。
言語の学習というと、すぐ言葉の学習ということになりがちですが、この時期の言葉の学習は、すべて物や事柄の学習と結びついています。ですから、日常の生活の中で、物を使わせたり、事物をよく観察させたりして、直接的、感性的な豊かな経験を与えることは、常に大切なことなのです。けれども、ただ直接的経験を与えっぱなしでは不十分で、それについて親心、必要な言語的説明を与え、また、言葉でそれを表現することを促し、その経験の言語化を意図的に組織しなければなりません。今日、テレビの普及や絵本等の利用で、幼児の文化的刺激が増大し、幼児の語いも増えてきましたが、それで十分だというわけではありません。いろいろな機会を利用して幼児の経験を豊かにする一方、年長児になった場合には、その経験を基礎に、基礎的な(自然)科学的な考え方や概念(動物、数、上下左右等々)について初歩的な指導を開始するのがいいでしょう。
一般に文字の学習は就学後の問題とされていますが、かな文字については、発生諭的にその学習の準備は四歳代よりはじまります。そのために、四、五歳の時から準備的な指導を行なえば、就学までにその子供も、少なくとも不自由なく読めるところまで達することができるはずなのです。けれども、この期の文字教育のねらいを、読み書きを学習するところに置くのではなく、日本語の音韻の学習の発展として、日本語の音のきまりや性質を知るというところに置くべきなのです。
言語指導に加え、童話や紙しばいを通して、幼児用の芸術作品を理解し、それを鑑賞できる能力と感受性を善うことは、この期の教育として大切です。そして、この学習指導は、幼児の言語能力をいっそう発展させるためにも重要な意義をもってくるのです。

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