幼児の漢字教育

小学校で学習する教科の中で、国語科の占める比重が最も大きいことは、どなたも御存じのことと思います。日本では、国語学習に当てられている時間数が全体の約四分の一を占めています。しかし、それでも、諸外国に比べると、非常に少ないのです。外国ではすべて国語科の占める比重がはるかに大きくて、全体の約二分の一を占めているほどです。例えば、ドイツの小学校三年生を例にとりますと、全体で週二四時間の学習時間があるうち、一四時間まてせが国語科です。これを見ても、外国ではどんなに国語学習を重視しているかがわかっていただけると思います。
母国語に習熟しないうちは、いかなる教科学習も能率的に進めることができません。社会科の学習でも、理科の学習でも、まず書物を読んでその内容を正しく理解することが、もっとも基本的で重要な学習です。つまり、他教科の時間数を減らしても国語科の時間数を増やし、読解力や表現力を高めることが、結局は他教科の学習効果をも高めることにつながるからです。その意味では、ドイツのように全体の学習時間の過半数を国語科に当てることは、賢明な考え方だということがいえます。
ところで日本の場合、読解力や表現力の重要な鍵を占めているものが漢字です。漢字の読解力や表現力の高い者ほど学力全体も高い、というのが実情です。よって、将来いかなる方面の学問をするにもせよ、その学問を効果的に能率よく進めていくためには、まず何よりも漢学力を高めておくことが必要だ、ということがいえると思います。
しかも、それはあらゆる知識を吸収するための道具であり、思考し創造するための道具ですから、少しでも早くそれを使いこなす能力を身につけることが得策だ、といえます。したがって同じ能力でも、その能力をいつ身につけたかが、その人にとって重大な問題になるわけです。つまり、一年でもより早くその能力を身につければ、それだけ獲得する知識も多くなり、また、その知識を活 用するために、頭の働きそのものをも良くすることができる、という利点があるわけです。これが、漢字教育は幼児にとって必要だという第一の理由です。

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今の子供たちはかわいそうだ。朝から晩まで、勉強勉強で追いまくられている。せめて幼児期くらい、のんびりと遊ばせてやらなくてはならないと思うのに、この頃は幼児に漢字教育をせよという者まである。昔はそんなにがつがつやらなくても十分に間に合ったではないか。今だってそれで間に合うはずだといって、幼児の漢字教育を非難する人びとがいます。
たしかに昔はのんびりしていました。しかしそれは、世の中のだれもがのんびりとしていたのですから、それで間に合っていたのであって、進歩の激しい今の世の中でそんな昔の夢を追っていたら、たちまち世の落伍者になってしまいます。
それに、私たちは漢字を幼児の遊びとして与えているのであって、決して勉強させているのではないことを知ってほしいと思います。この教育を受けている子供たちは、この時間が一番楽しい、といっています。幼児たちは、楽しんでいる間にいつの間にか漢字を習得してしまうというわけです。
さて、物事にはすべて適切な時期というものがあって、その時期に学べば容易に習得できるものが、時期を失ったら最後、その数倍の努力を払ってもそれだけの効来が得られなくなることを、皆さんはよく御存知のことと思います。
したがって、教育というものは、その適切な時期を知ることが何よりも緊要な問題だ、といわなけなければなりません。漢字教育は幼児にとって必要だと主張する第二の理由は、幼児期が漢字学習を始めるのにもっとも適切な時期であることを、実験により証明することができたからです。
今まで漢字は難しい字、かなはやさしい字といわれていて、だれもがそう信じていました。しかし、幼児に実験してみますと、事実はまったくその反対で、幼児の知っている事物を表わす漢字だったら、漢字はかなよりもずっと容易に覚えられるのです。
かなは抽象的な音声しか表わしていませんので、幼児には関心が寄せにくく、覚えにくい文字なのです。だから、「い」を単に「い」としては覚えにくいので、「犬のい」として具体物に関係づけて覚えさせることをしているわけです。
 そのことがわかれば、「い」を「犬のい」として覚えるのよりは、そのものずばり、犬そのものを表わす「犬」という漢字を覚えることの方がずっとやさしい道理であることがわかっていただけるはずです。
それが疑わしい方は、「い」と「犬」と、どちらが覚えやすいか、幼児に実験してみるとよく、「犬」はすぐ覚えて忘れませんが、「い」はなかなか覚えず、覚えてもすぐに忘れやすいことがわかるでしょう。
漢字は字画が複雑なので、いかにも難しそうに見えます。だから、今までだれもが頭からそう決め込んでしまったのです。しかし事実は、その複雑な字形は、記憶の手がかりになるのであって、幼児には実際は覚えやすいのです。

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