外国語教育

私たちの生活に言葉がないとしたら、どんなに不便なことでしょう。気持や意思を伝えるためにも、手振り、足振り、ジェスチャーに頼らなければなりません。人間と動物の根本的な相違の一つは、言葉のあるなしです。
旧訳聖書は、バベルの塔が破壊されるまで全ての人びとは同一の言葉をしゃべったと記しています。しかし現実の世界は、地球上に多くの種族や民族さらには国家が存在し、言語も風俗習慣も様々です。
外国の人々と文化の交流を図ることはもとより、お互いに理解するためにも、言葉がわかりませんと目的を達することができません。世界の人びとが日本語を勉強してくれるなら、あえて外国語を学ぶ必要はありませんが、それも難しいことですので、積極的に外国語をマスターすることが有利であることは多言を要しないと思います。

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世界中どこでも、子供は三歳になりますと母国語を話し、理解します。これは、生まれたその日から母親あるいは周囲の人達の言葉を繰り返し聞いているからにほかなりません。してみると、外国語を覚えるのも常識からが最適ということになります。
大人になってから外国語を覚えることは大変むずかしく、正しい発音でしゃべることはほとんど不可能です。
零歳から三歳までの脳は、周囲の刺激を何の抵抗もなくそのままの形で吸収します。したがって、この年齢に外国語を自然に浸透させることが一番好ましいのです。ただし、間違ったものを教えますとこれを矯正することが非常にむずかしく、むしろ教えない方がよいことになります。
なるべく早い時期に優れた発音による外国語、ここでは英語に接するようにします。一番理想的なのは、生まれたときから英語のテープを聞かせることです。幼児開発協会では、いわゆるエンドレステープ、すなわち六分おきに何回でも繰り返し聞かせられる教材を開発しております。もちろん吹きこんでいるのはアメリカ人です。日本人がどんなに英語を上手に話しましても、生まれた日から母国語として英語を聞いている人にはとてもかないません。といって、アメリカ人だから誰でもよい先生になれるというものではありません。その人の学歴や人柄、なまりなどについても十分考慮して選択しなければなりません。
「こんにちは」、「私の名前は何々です」のような簡単な日常語を必ずしも使う必要はありません。むしろ、内容が難しくても、また多少長くても、童詩のような韻律のあるものすなわち詩的なものが適当です。自然の美や人間の愛情をうたったものが好ましく、言葉を覚えるとともに心の中に美しい感情が自然と育つようにします。幼児は一つ一つの単語を覚えるのではなく、パターンとして記憶してゆきますので、このょうなものが好ましいわけです。たとえそのとき意味がよくわからなくても、将来理解するようになりますので、心配はいりません。
さて零歳から注入することがょいといいましたが、実際には実行がなかなか困難です。幼児開発協会では、センターヘ通うとしてもやはり三、四歳が適当ですので、この年齢層を中心に募集しました。
その中に、一年一〇ヵ月のマミちゃんと、一年二ヵ月のチコちゃんが加わっていました。初め先生方は、あまりにも幼いこの二人を参加させることに躊躇しましたが、お母さんの切なる願いでとにかく入学させてみることにしました。チコちゃんはまだおむつをしていて、やっと歩く程度です。当然、レッスンの間お母さんの腕の中にいる時間が多い有様でした。
二人とも、他の子供のように、先生のあとについてしゃべることもなく、おとなしく参加しているだけでした。しかるに七ヵ月経ったある日、マミちゃんが突然、今まで習った言葉を全部しゃべるではありませんか。しかも最も立派な発音で。
同様にチコちゃんは一〇ヵ月後にしゃべるようになりました。二人は長い間、外からの刺激を受け、それを蓄積していたわけです。そしてある日、それがあふれ、突然言葉となって出てきたわけです。
二人のお母さんは、週一回教室に参加するほか毎日、教材のテープを流していました。それは決して無理に聞かせるのでなく、遊んでいるときにも、またときとして食事のときにも流していました。これらの言葉は、母国語を覚えるのと同じように彼女等の中にしみこんでいったのです。
私たちは、よく世間でいわれるように、やっと一つの言葉を覚え初めた時期にぜんぜん異なった外国語を教えることによって幼児の頭の中に混乱が起きるのではないかと心配しました。しかし八〇余人のお母さんから観察の手記を書いてもらいましたところ、ぜんぜんその兆候はありませんでした。マミちゃんのお母さんは次のようにいっています。
「英語教室に通いはじめてから、急に日本語の言葉も豊かになってきたように思います。これは私の感じですが、キャシー先生の教室で、言葉、動作を楽しく覚えることの習慣が、いつか身について、日本語を心同じような態度で習得しようとしているのではないでしょうか。」
その他のお母さんの意見として、テレビの英語を一人で間くようになった、外で外国人に会うと「ハロー」と声をかけるようになり外国人を珍しがらなくなった、集中力が出てきた、等々の利点をあげ、弊害を訴える人は一人もいませんでした。
せっかく幼いとき覚えた英語も、特別な幼稚園、小学校以外は教えないため中断され、すっかり忘れてしまうので、無駄ではないかとの意見があります。しかし、人間の一四〇億ある脳細胞の中にインプットされたパターンは、外見すっかり忘却されたかのごとく見えても必ず残っております。幼時外国に住んでいて、間もなく帰国し、すっかりその言葉を忘れていたが、大人になって再びその言葉を勉強したところ、非常に楽に覚えること ができるし発音もよい、という例は多々あります。

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