言語と社会化

幼児の発達に関連して社会化という言葉が使われるとき、おおまかにいって、次の相互に関連しあっている二つの過程のいずれかが、あるいは両方が意味されています。
個体が一定の社会の中で成長する過程で、その社会の文化、社会意識、価値体系を取り入れ、その社会の成員としての欲求、意識、人格を形成していく過程。
同じく、一定の社会の中で、大人のなんらかの教育的働きかけを受けて諸文化所産を学習し、その社会の現在の発展水準にふさわしい精神的、知的能力を感得していく過程。
幼児期の言語の学習、習得は、実のところ、この社会化の二つの過程の両方に密接に関わっています。しかし、ここでは、この社会化の後者の過程だけをとりあげ、そこで言語の学習、習得がどのように関係しているのか、幼児期の幼児の知的発達を完全なものにするためにこの期の言語指導をどう組織したらよいのか等の問題を考えてみることにしましょう。

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言語の獲得が幼児に飛躍的な精神発達をもたらす理由の一つは、言語がもっている事物の特徴や性質を抽象、一般化する機能に関わっています。物に直接働きかけて、物を操作する行為に、幼児の思考の発達のもう一つの根源があるため、たしかに、言語を獲得しなくても、その行為を通して、対象の特徴や性質をある程度知ることができます。けれども、物は常に具体的であるために、幼児がその物の手がかりとして知った特徴や性質は、偶然的なものだったり、非本質的なものだったりします。このような状況の下では、みかけが異なる同一の物が同じものだと知覚、判断されません。同じグループの事物、現象から、共通な、より本質的な特徴、性質あるいは関係を抽き出し、それでもって、それらを一つにまとめることを、ふつう抽象、一般化といいますが、語の獲得は、この機能の形成を促します。もっとも、語を獲得したての幼児のこの抽象、一般化の水準は非常に低く、せっかく覚えた、例えばば「にゃんにゃん」という語は、犬や猫やトラや、さらに毛糸、毛布をも指すものなのですが、しかし、語の日常的な利用の中で、その水準は急速に高まり、二、三年のうちに身のまわりの物をすべて正しく概括できるようになるだけでなく、就学前期の終りごろには、乗物、果物、動物等の上位概念で、下位の事物をまとめることができるようになります。このように、言葉を覚えるということは、幼児にとってたんに物の名前を知るということではなく、一方で、事物の性質を言語に蓄積させているこれまでの人類の経験にそって知ることであり、他方で、事物の性質を知る仕方、つまり思考の仕方を学ぶことなのです。また、言語の習得を通して、幼児の知覚、思考が大きく変わるだけでなく、記憶の仕方、注意の仕方も変わり、幼児の精神は大改造をうけることになるのです。
言語の学習が幼児に知的能力の一層の前進をもたらす源泉の第二は、言語的な伝え合いが可能となることから、親や教師のお話や事物についての説明を通して、今までの実際に経験したことのない事柄や事物の性質を直接的にも間接的にも学ぶことができるという点にあります。幼児が園で動物を飼うとき、教師の説明やお話は、幼児の直接的な経験を方向づけるだけでなく、目の前で経験したことのない動物の別の性質を知らせることもできます。このようにして、幼児は自分の経験や知識を著しく拡大することができるのです。
言語が思考や知的能力の発展をもたらす第三の源泉は、言語が思考の支え手として幼児、児童の思考に入りこみ思考の形態を改造することにあります。一般に、幼児期の子供は、伝え合いのために言葉を使いますが、言葉だけで物を正しく考えることは困難です。けれども、就学前期の終りごろ、あるいは就学後、完全に課せられるいろいろな課業の学習と結びついて、子供、段々に、言語を操作し、抽象的に思考をすることができるようになります。このことによって、児童の思考はさらに、新しい飛躍した段階へと進みますが、幼児期には、母国語の学習やその他の知的な諸活動の学習を通し、その飛躍のための、まったく基礎的な準備が行なわれるといえるわけです。

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