集団教育の効果

親や教師をはじめ、私たち大人は、子供たちが未来の主権者として育つことを願っています。だからこそ幼児時代も、ただ単に訓練の時代としてではなく、友達の中で十分に遊び、自分の頭で考え工夫し、自主的、創造的に活動する、子供自身の時代として、せいいっぱい生きてほしいと望んでいます。
では、そのためにはどのような幼児教育が必要でしょうか。それには、大人と子ども一対一の教育ではなく、集団教育(保育)が必要です。もちろんこれは、一斉保育のことではなくて、集団の発達と個人の発達とが統合された集団教育のことです。現実の集団保育の中には、保育条件の乏しさ、情勢の厳しさなどから様々な問題があります。しかしやはり、いまのべたような生き生きとした子供を育てることは、集団保育の中でこそ可能だといえます。

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教育には、文化遺産を受け継ぐいわゆる陶冶と、それを主体的、創造的に適用して自らの生活を変革し、人格を高め、さらに新しい文化をつくりだしていく力を育てる訓練の、二つの面があるといわれています。学校教育においては、前者を教科指導、後者を生活指導というように呼んでいます。そして、全面的に発達した豊かな人格を形成していくためには、その両者の相互関係をつくりあけることが大切な教育作用になるわけです。もし、教科においてすぐれていても、そのことを統合して自らの生活の創造に役立てることができないとき、いわゆる三無主義(無気力・無関心・無責任)的人格で成績だけは優等生というような子供が育ってしまうからです。そして、陶冶と訓育の統一にとって不可欠なのが集団であるといえます。
幼児教育についても、教育のしくみは、いまのべたことと同様ですが、学校教育の場合のように教科指導、生活指導という形をとらず、幼児期に即した方法で行なわれます。すなわち、陶冶の面では、文化遺産を教科ごとにうけつぐ以前に、生活役使、運動機能、認識機能、伝達、表現機能、集団(対人)機能など、人間として生きる上での基礎的な能力を獲得することになります。また訓育の面では、おのおのの能力をただひきのばすことではなく、幼児なりにその能力を統合して自分たちの生活を豊かにしていくことになります。そして、この力を養う上に必然となってくるのが集団です。この両者の統合の場が、幼児にとっては遊び(広義)であり、遊びによる幼児教育がきわめて大切になります。
遊びは、その中味が豊かになればなるほど、一人では意味をなさなくなります。保育者の指導によって、遊び(狭義)から、子供にとっての労働へと発展する中で、共通の目的をもった組織的な集団が必要にたり、その過程で仲間づくりが行なわれます。共通の目的をもった労働に取り組むとき、今までに仲間たちが獲得したあらゆる知識を活用し、様々な機能をはたらかせることが必要になります。そして、そのとき、さらに新しい知識を求め、いろいろな能力を身につけたいという、主体的な陶冶への要求心生み出されてきます。だから、遊びとその過程における集団づくりは、教育の目的でもあり方法でもあるといえます。クルプスカヤなどロシアの教育学者は、全面発達をめざす教育にとって重要な三要素として、集団、労働、自治をあげていますが、これを保障するものが集団教育であり、幼児期についても、いまのべたような意味で同様だといえます。
はじめは、一人一人ばらばらに砂遊びをしていた子供たちが、保育者の働きかけで、みんなで池をつくり、川をつくって、舟をうかべたり、ままごとあそびを展開したりするようになります。例えば川遊びが進んでくると、池、川、海などの違いも知りたいと思うようなり、また、よく流れる川をつくるにはどうしたらよいか、みんなで工夫し協力して、よりすぐれた川をつくるようになります。さらに、大雨がふってみんなの砂場に水がたまって砂あそびができないようなときには、みんかで話しあい考えあい学びあって、役割を分担し協力して、水を流す労働にとりかかります。そうした過程の中で、新しいことを学ぶ意欲がわき、学んだことをもとに、自らの生活を創造していく力を身につけていくことができるわけです。このような遊びの中から、さらに、園の庭にほんとうの池をつくって魚を飼おうとか、プールをつくってみんなで泳ごうとか、次の大きな目標を目指した仕事へと発展していきます。そしてこの仕事は、たんに早く巧みに仕上げることを目指すのでなく、そのとりくみの過程がそのまま、訓育と陶冶の接点である仲間づくりにつながり、豊かな人間をつくる場になります。また、みんなで期待をもって、自分の体を動かして工夫しながら、根気よく動植物を育ててみる、という集団保育の実践をとおしても、科学する心やいつくしむ心を養うことができます。例えば、はじめ動物の糞はきたないからさわりたくないと思っていた子供達も、仲間たちと伝えあい考えあうなかで、自主的にそうした外面的、感覚的な理解をのりこえて、動物の健康を思いやり、生理を学んで、糞掃除もすすんでやれるようになっていきます。

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