母乳と人工栄養

二、三ヵ月後にはじめて母親になるという人たちに、赤ちゃんが生まれたら母乳で育てるつもりですか、それとも人工栄養で育てるつもりですかとたずねてみました。九九名の被調査者のうち、人工栄養でという人は一名、混合という人が一名で、あとはすべて母乳で育てたいと答えた。これはまだ出産前の調査であるから、生まれたけれど母乳が出なかったという場合もあろうし、東京の中流階級の婦人たちの調査の結果がそのまま日本を代表するものでもありません。しかし、わずかの例外を除いてほとんどすべてが母乳で育てたいといっているのは興味あることです。
母乳で育てたいという理由は様々です。栄養的にすぐれている、経済的である、子供の健 康によい、という理由とならんで母親としての実感をあじわいたいというのがかなりありました。無心に自分の胸に抱かれて乳を吸う子供をみていると、母親になったという実感が生ずるだろうと考えているわけです。これは一つの感傷的な気持かもしれませんが、子供を生む以上、できるだけ自分の手で育てたいという気持は尊重すべきです。これに対して、人工栄養にする予定であると答えた婦人は、母乳なんて古くさいというのがその理由でした。

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欧米の婦人のなかには、子供を母乳で育てるということに何か動物的なものを感じてこれを忌避しようとする人がいます。その主張のなかには、いまはいい粉ミルクなどもあるからこれで十分であるという考え方と、母乳を与えると母親自身の体が衰えるし、乳房の形が崩れて女性としての魅力が乏しくなってしまうという考えがあります。そのため、わざわざ注射をして母乳の分泌を抑止しようとするものもあります。これに対して、母乳で育てることを積極的にすすめるのは、精神分析学の流れをくむ学者たちです。この立場では、母乳が栄養学的にすぐれているという理由のほかに、乳児が母親に抱かれて乳房を吸うときにくちびるの粘膜で大人の性欲に似た満足感示えられるのだと考えました。そして、母乳で育てられた子供の方が、人工栄養児よりも成長してから情緒的な安定感があり、夜尿などすることが少ないと主張しました。これが事実なら、万難を排して母乳で育てるべきなので、はたしてこの主張が正しいかどうかが実際問題としてとりあげられました。つまり、乳児時代に母乳で育てられた子供と粉ミルクや牛乳などの人工栄養で育てられた子供をたくさん集めて、性格特徴に一般的な差があるかどうかが比較されたのです。ところが、顕著な差は何も認められませんでした。母乳で育てるかどうかということが、性格形成のうえに一義的な差をつくるとは考えられないのです。
もともと母乳が十分でるかどうかということは、母親の体質とか健康状態によって大きく左右される問題です。したがって、それが出ている間は母乳で育てるのが自然です。しかし、母乳が出ないからといってそのことを心配したり、この子はだめになると考えたりする必要はないのです。
ただ、母乳が出るのに、美容上の理由からこれを与えず、粉ミルクなどで育てようとする母親には別の問題があります。つまり、成人した女性としての自覚はあっても母親としての自覚に乏しい未成熟な面示あるのです。このような母親に育てられた子供は、母乳で育てられなかったということではなく、自己中心的で未成熟の母親に育てられたということによって、ときに問題児となることがあるのです。

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