幼児の嘘

幼稚園に通っている男の子ですが、すぐわかるような嘘を平気でつきます。ほっておいてよいものでしょうか。
たいていの人は、事実と一致しない言明はすべて嘘なのだと思いこんでいます。また、嘘つきは泥棒のはじまりなどという諺もあります。そんなところから、幼児の嘘に対して極端に神経質になっているお母さんが多        いようです。
しかし、本問にあるような嘘は、ほんとうに危険なものでしょうか。大人の嘘と幼児の嘘とは、同じものなのなのでしょうか。ここらの問題をきちんと解決しておかないと、必要以上にあわてふためくことになりがちです。

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いわゆる嘘とは、相手が気づかないことを予想したうえで、架空の状況を意図的に構成し、それによって相手のある行為をひきだし、自分の利得をはかろうとする行動、こんなふうに定義できるでしょう。大人の嘘は、大部分がこのような性質をもっているし、そこがまた悪いとされる所以です。ところが、子供の嘘の大部分は以上に挙げた嘘の特性のいくつかを欠いているのがふつ うです。
いま、子どもの嘘を大まかに分類すると、
(1) 子どもの心性の米熟さにもとづくもの。
(2) 言語能力が不足しているために起こる不適切な表現。
(3) 願望充足の嘘。
(4) 自己防衛の嘘。
(5) 大人と同様で悪質な嘘。
などをあげることができます。
このうち、(1)とは、例えば次のようなものです。子供は夢が現実とは異なることを知っているけれども、夢がどこにあるかを問われると、やはり眼の前にフィルムのようにあるのだという。子供にとって、みえることはあることなので、このような誤りが生じます。
また、(2)とは、例えば、牛のように大きな犬を見たといった類のものです。これらはいずれも、他人を騙そうとする意図はもっていないし、それによって利益がえられるわけでもない。先にあげた、嘘の要件のいずれをも満たしていないことは明らかです。いわば、結果的な嘘、みかけの嘘にすぎません。
(3)の願望充足型の嘘は、子供には数多くみられます。満たされない強い願望があり、そのためこうあってほしいことが「こうだ」という形をとって表出される場合です。
例えば、新幹線にのってみたいと思いこむと、昨日新幹線にのって大阪へ行ったよ、というようなでまかせの表現がでてくることがあります。このようなものが、この種の嘘の原型です。
ところで、願望充足型の嘘も、(1)と(2)との変形あるいは延長のようなものであり、嘘としての要件を欠いています。架空の状況を構成したことは事実としても、それは一種の自己満足にすぎないので、相手を騙し利得をはかろうとする意図はありません。大人なら願望充足は白日夢のような人に知られない形をとるのに対して、未熟な幼児ではそれが他人に表出されるというにすぎません。
しかし、それなら、(1)(2)と同様に(3)をみすごしておいてよいかというと、必ずしもそうはいきません。ここでは、子供のなかに強い要求不満の潜在している点が問題なのです。例えば、兄弟のとり扱いにえこひいきがあったりすると、無視されている子供は誰か他人にひと一倍かわいがられているといった嘘をつくことがあります。
幼稚園で、年少児のクラスの帽子を毎日トイレに投げすてていたなどという子どもの例もあります。この子は、弟ばかりかわいがられていることの腹いせにこんなことをしたのだが、その結果、自分はそんなことはしないという重大な嘘をつくことになってしまった。このように、これらの例では、嘘のものは問題ではなくとも、その背景となる要求不満は何かを考えてみる必要は大きい。
(4)の自己防衛の嘘は、躾の厳しすぎる家庭や一貫した躾方針の欠けている家庭などに、よくみられます。その機制(自己防衛のための適応の仕方)は単純であるから、よく注意していればきわめてわかりやすいものだし、ある意味では、本能的なものともいえます。
かけ足の遅い子供に、むりやり競走させようとすると、足が痛いという嘘が自然にでてくるし、立派なガラスを割った子供は叱責を恐れて、僕じゃないと言います。これらは、どの子にもみられるものです。しかし、絶対にお弁当を食べ残してはいけないなどというと、途中で残りを道に捨てて、全部食べてしまった。という嘘をつきます。この後者のうそは、自己防衛の必要度の高いとき、つまり、はじめにあげたような家庭でよくみられることになるのです。したがって、このときも、躾のあり方その他について、むしろ、親の側での反省が必要です。
(5)の悪質な嘘は、すでにのべたように幼児にはあまりみられません。しかし、(3)(4)のような仕方で、自然に嘘をつくことを覚えた子供が、嘘の利用価値を知ったとき、この種の危険な嘘が発生してくると思われます。特に、身近な大人が裏表の違いが大きいような言動を示すときに、習得されやすい。ここでも、躾のあり方を反省しなければなりません。

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