躾とは

 子どもの躾について自信がないと自覚されることは、とてもいいことだと思います。それは、自分のこと、子どものこと、躾のことを、よく考えられた証拠です。親が子どもの躾に自信をもつのは容易なことではありません。といって、自信がないからしつけをしないというわけにはいかないのですから。
 戦後の混乱期に子ども時代を過ごした人は躾に自信がない、とか、躾が分からないと言う人が多いようです。それは、敗戦を境に価値観が変わり、教育観が変わっただけでなく、生活様式、生活内容が変化して、当時の親が何をしつけるべきかが分からなくなってしまったからです。多くの親が古い躾の中の何を残し、何を捨てるかに迷いました。また、新しい躾として、何をするのがよいのかにも困惑したのです。
 その結果が躾不足の現代です。
 ですが、この混乱、空白は、私たちにいろんなことを考える機会を与えてくれました。
 いわば、躾とは何かについて。
 一言で言うなら、躾とは、人間の行動を方向づけ、習慣化する」ことだと思います。着物を縫いあげたとき、形を整えておくために糸で「しつけ」をします。これが人間のふるまいの形を整えるという意味に転じたと言われます。
 したがって、躾は、第一に、親が考えてよいと思う方向に習慣化することです。で、それぞれの親で躾に多少の違いが出てきます。それは、親の生き方、価値観、人生観、教育観に左右されるからです。
 第二に、躾には、子どもをよき未来社会の一員とするために、社会の動き、社会の期待を組み込んでいくところがあります。いい躾をするためには、親が先の見通しがよく、視野が広いことが大切といわれるのはそのためです。
 第三に、躾は一種の文化遺産で、それぞれの民族、それぞれの国の伝統が受け継がれているものでもあるのです。新しい躾を生みだす努力をする一方で、過去から未来へつながる伝統の中から何を選んでしつけていくかも、大切な親の役割です。

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 子どもが幼児期のとき、生活習慣の躾を熱心にした母親が、その後、子どもが小学生になったとき引き続き躾を熱心にするとはかぎりません。というのも、一部に、躾を勉強に切り替えてしまう母親がいるからです。
 しかし、躾は人間の行動の方向づけであり、習慣づけですから、勉強とは全く異 なる領域の営みで、勉強を熱心にさせておけば、自然に躾もできるというものではありません。勉強はどちらかといえば子どもの知的な活動領域ですが、躾は感情、態度、ふるまいなどの領域を扱うのですから、二つを両立させるように指導することが大切です。これは、親の心掛けしだいです。
 もちろん、両方は深くかかわ っていて、知的に伸びれば躾のレベルもあがり、また、良い習慣が身につけば学習効果もあがるという相互関係にあります。
 また、躾の原則は子どもの良い点わ伸ばし、悪い点を直すことですから、成長につれて現れてくるいろいろな問題について、その都度、芽をつみとったり伸ばしたりしていく必要があります。例えば、放っておいたら好ましくないクセがつくもの、体や心の健康に悪い影響のあるもの、社会のルールを乱すもの、人に迷惑のかかるものなどは、早めにその芽をつみとる必要のあるものです。
 だから、勉強が忙しいからしつけは手を抜いて、というわけにはいきません。
 成人式の二十歳をはるかに過ぎた青年で、自分は、まだ一人前と思えないと言う人が意外に多いのも現代の一面です。
 だいたい、高学歴の先進国では、遅くまで経済的に自立できないのは珍しいことではありま せんが、それでも、日本の青年ほどベッタリ親に依存してはいないようです。
 そのほかに、生活技術が未熟で一人で暮らせない、社会性が幼稚で大人の社会でのつき合いができない、世の中のしきたりやマナーを知らないので一人前として通用しない、自分のことで手いっぱいで、他人のことまで気が配れないなど、明らかに、大人になるための躾に手抜きのあったことを感じさせるような問題もたくさんあります。
 本来、躾は、幼児期から児童期へ、児童期から青年期と、段階をふんでだんだんレベルをあげていき、最後は、巣立ちの前に大人として通用するための仕上げをして完了となるわけですが、幼稚な青年の過去には、この長期間をかけての躾の高等化が見られません。せいぜい、幼児から小学校中学年ぐらいなところで、おしまいにしているのです。
 躾も、表面的、形式的なものは比較的早くからできますが、内面の精神的成長をまって躾ていかねばならないきめ細かなものは、青年期に入ってからが本番です。
 また、躾の最終目標の自律化も、青年期の自立とからめてこそ本格化するのです。
 根気よく、お子さんを立派に一人前にするまでがんばってください。

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