ほめ方について

 ほめることは、しつけの技術としてとても効果的だと思います。子どもの行為の中で、続けさせたいことはほめ、やめさせたいことは叱るのが、躾の公式のようなものです。お子さんの行動で、これからもやってほしいことを見付けて、大いにほめてあげていただきたいものです。
 子どもだけでなく、人はだれでも、自分の行為を認めてもらい、ほめてもらったら、快適な気分になり、自信もつけば、意欲もでます。で、ますますがんばることになります。とくに、子どもにはその傾向が強い。その意味でほめるということは、一種の特効薬的作用があります。
 しかし、それには、子どもの行動によく目を配り、ほめる機会を探すことが大切です。日本には叱って躾ける的な躾の伝統があり、しかることはマメな親が多い割に、ほめる努力は怠りがちです。総理府青少年対策本部の国際調査をみると「お母さんが分かってくれると思うか」の質問に対して、分かってもらえると答えた率は、日本の子ども六八%強、アメリカ、イギリス、フランス、タイなどの子どもが九〇%前後。もっと子どもをよく見て、理解してやり、ほめる機会を探す努力が必要だとつくづく思わせられます。

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 原則として、ほめるときは、見かけたときすぐがいいのです。子どもが、幼児や小学校低学年生なら、なおさらです。
 ただ、友達や兄弟が同席している時は、後で一対一でほめてやるのがいいでしょう。いずれにしても、その日のうちです。
 というのも、時間がたてばたつほど、何をほめるかの焦点がぼやけてしまうからです。
 大切なことは、何をほめているかがはっきり分かるように言ってやることです。「お隣のおばさんの重い荷物を手伝って運んであげたんですって、お礼をおっしやってたの。ごくろうさん。お母さんも、とてもうれしかったわ。人を助けてあげるのはとてもいいことですもの」というように。何をほめられたかが、はっきりすれば、子どもは、その後の行動の努力目標がつかめるので、その線で大いにがんばろうと思うようになります。
 子どもの行動の結果をほめるのが普通ですが、うっかりすると、行動的で要領のいい子ばかりがほめられることになり、同じ気持ちをもっていても、もたつき気味で出遅れる子どもは、ほめられる機会がないことになります。その結果、兄弟の中にも、よくほめられる子と、ほめられることの少ない子ができます。
 そこで、ほめられることの少ない子には、特別、細かく目を配り、具体的な行動にならなくとも、その気持ちだけでも汲んでやることが必要です。「ママの風邪のこと心配してくれてるの分かってますよ。ありがとう。その気持ちだけでも元気が出てくるわ」と。
 子どもは、それで勇気づけられ、なんとかして気持ちを行動で現そうと努力するようになります。また、時には、気持ちを、こんなふうに態度で現したらと、行動化、実践化の仕方を教えてやるのもいいでしょう。
 また、心のあり方そのものを、ほめてやることも大切です。
 例えば、同じことをしたのに、友だちだけ先生にほめられたが、その子は、先生に反感も抱かず、友だちにもやきもちもやかなかったというとき。あるいは、きょうだいに、大事な物をこわされたのに、許してやったときなどがそれです。
 この点については、昔のしつけの方がマメで、心根のやさしさとか、心掛けよくとか心ばえの立派さとか、心のあり方によく目配りしてしつけていたような気がします。現代はしつけも実際派で、少々、味気ない感じです。
 効果的な方法だけに、ほめることには、またそれなりのリスクも伴います。
ほめられたくて、競争になったり、嫉妬が起ったりもその一つです。一対一で、ほかの子どもの見ていないところでほめるというのを原則にする のは、そのためです。
 また、子どもはほめられたいあまりに、本心そんな気持ちがないのに、体裁ばかり飾ろうとするかもしれません。そんな時には「気持ちからそうならとてもいいことよ」と、叱らないでで、何か大切かが分かるように言ってやるのがいいでしょう。
 したがって、言葉でほめるだけでなく、褒美として物を与えるのは、かなりの危険が伴います。特別のことでもない限り、年に一回か二回「よくやってくれた感謝の気持ちですよ」と、物を与える程度が無難でしょう。
 その代わり、ほめる時には、口先だけでなく、やさしい態度でよろこびを表現してやりたいものです。小さい子ならからだに触れて。
 さらに、困ったほめ方の代表とも言えるのが、ほめて子どもを釣ること。「あなたはいい子だから、留守番してくれるわね」というように、先走りしてほめて、やらせようという方法。大人のさもしさが分かると、子どもはその手に乗らなくなり、同時に軽蔑します。
 そして、危険なほめ方の代表は、ほめることで、無理矢理大人好みの「いい子」に仕立てあげること。「いい子、いい子」と言われて、子どもは手も足も出ない。こうして、指人形よろしく、大人に飼いならされた子は、自分を見失って、青年期になってから問題を起こします。
 躾は、大人のためのものではなく、子どものためのものであることを忘れたくないと思います。

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