衣服が汚れても平気な子

 汚れた衣服を着ているのが結構だというわけではありませんが、清潔の問題より、この時期の子どもにとって、より切実で意味があるのが、仲間社会の一員として認めてもらうことです。彼らは友だち仲間のグループを作り、固く結束していて、そのグループからはみ出すことをひどく恐れています。そこで、衣服でも持ち物でも、言葉や仕草でも、仲間とそっくりで、まるで仲間社会へ入るライセンスでもあるかのように、同じものをほしがり、身につけたがります。
 ある母親が、いつも着ていてすっかり汚れてしまったシャツを、むりやりはぎとって、新しいシャツに着せ替えました。彼はしぶしぶそれを着て登校したと思っていたら、なんと、追跡側の垣根のところにつっこんでありました。母親は、肌寒いその日、下着一枚の子どもの姿を思い浮べて、あわてて汚い破れたシャツを学校へ届けたそうです。
 もう、彼らは清潔の必要性も、その技術も一通り心得てはいます。でも、それ以上に価値のあるものがあります。そこに、子どもの選択がはたらくわけです。
 また、子どもの成長からみても、この時期に仲間社会の一員として活動することは、彼らの将来を考えたら、ぜひともさせたい経験です。彼らはここで、将来、社会人として活動するときのひな型を身につけます。そして、この仲間こそ、いずれ共に社会を担っていく仲間だからです。
 幼児期で、同じ衣服をいつも着たがるのは、少々事情が違います。これは、子どもが心理的に衣服に依存している。何か、不安や不満があったとき、例えば、親に実力以上の注文を出されてつらいとき。「もう大きいから、ひとりでやれるわね。しっかりしているんだから」などと言われてしまうと、甘えるわけにもいかない。しかし、気持としては何かによりすがりたい。そんなとき、幼児はよく物にすがります。同じ衣服に安心感を見い出しているわけです。
 一見、似ているようで、子どもの問題というのは、それぞれ発達段階で内容が異なっているところに気をつけねばなりません。

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 そこで、しつけとして考えたいのは、けじめを教えること。
 仲間と一緒の時はきたない服でも、それに意味があるなら結構。しかし、家庭内や家族と外出するときなどは、普通の社会のあり方や価値観を尊重すること。特に、一般の人は汚い衣服 を見て不快な感じを受けるので、その気持に敏感でなければならないこと。この種の問題は、しかるとか、強制するとかという態度でなく、親の意見、社会のしきたりとして話してやるのがいいでしょう。子どもは自分中心で、他人の思惑まで考えおよばないところがあります。それを気付かせてやることが躾として大切です。
 また、仲間と同じ衣服がよくても、不潔なのと、古いのとは違うということも教えてください。不潔は不衛生、不健康でハタ迷惑です。しかし、古くて破れていても、よく洗って、繕って着るのなら結構だというわけです。これもけじめです。男の子もお母さんと一緒に、繕いをしてみるのもいいではありませんか。
 だいたい、現代の日本の子どもの衣服は、ぜいたく過ぎる感じがします。一つは、子どもの仲間集団が少なくなって、みんな大人のように流行を追うようになったからでしょう。アメリカの子どもの衣服を見ると、不潔ではありませんが、実に質素、ガレージセールなどで求めた、よその子のお古も平気で着せます。洗いざらしで、みんなくたびれている。だから、中身の子どもが生き生きと見えます。くたびれた衣服なら、親も汚しても文句は言わない。ほとんどズボンはジーンズです。
 ジーンズが気に入っているなら、二、三枚用意して、とことん破れるまで着せてはいかがでしょうか。使えなくなるまで使わせてみるのも、躾のうちです。
 不安や不満があるために、同じ衣服に依存して、しがみついている時は、まず、不安、不満を取り除くことが先決です。したに赤ちゃんが生まれて、この種の問題を起こす子どもをときどきみます。いわば、汚して注目されるのを期待しているわけです。
 また、汚い、早く、着替えてと口うるさく言うと、かえって反発して着替えない子どもも多いものです。なかには、しかられて反抗し、わざと汚す子どももいます。
 ですから、非難めいた言い方でなく、さり気なくチャンスを与えてやるのがいいでしょう。着替えなさいと言わないで、次にする行動の方に注意を向けるようにすると、すんなりいくことが多いような気がします。

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