あいさつの躾

 あいさつとは一定の形式の言葉のことだと思っている人は、案外多いのではないでしょうか。たしかに、きまり文句の「おはようございます」「さようなら」が、その場その場で出てこないのは片手落ちでしょう。
 ですが、あいさつは言葉だけ言えばいいものでしょうか。事務的、機械的に言葉だけいやにはっきりいわれて、感じの悪いこともままあるものです。特に幼い子どもが、大人の口移しよろしく、口上でも述べるように、大人びたあいさつをするのは感じのよいものではありません。
 と、考えると、あいさつとは言葉だけでなく、態度、ふるまいと一体のものだということに気付きます。そして、ふるまいの底にあるものが、心のあり 方で、この場合は、他人を尊重し、好意を表現したいという心が基本になっています。
 子どもは、言葉がうまく言えないのですが、知らん顔をしているわけでもなく、ふんぞりかえっているわけでもないのですから、相手の人が必ずしも、不快な印象を受けたとは思いません。むしろ、「モジモジしてうまく言えない内気なタイ プだけど、あいさつしようと一生けんめいらしい」と感じて好意をもってくれるのではないでしょうか。
 エチケットの問題は、相手がどんな印象を受けるかが大切なポイントですから。きっと積極性が出てくれば、うまくやれるでしょう。

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 イギリスでは、多くの親がわが子に最初に教えようとする言葉は「ありがとう」「どうぞ」「すみません」だと聞いたことがあります。「ウマウマ」「パパ」「ママ」などを最初に教えようとする親とは、基本的にどこか違う感じがします。一方は、社会的な言葉を重視し、他方は内輪のことを重視するというように。
 そして、エチケットの問題では、この社会的な、いいかえれば他人的な要素を見落とすことはできません。「親しき仲にも礼儀あり」といっても、あまり格式ばってはおかしなことになり、つい内輪の家族間ではエチケット抜きの交流になります。しかし、仕上がった大人はともかく、これからエチケットを身につけていかなければならない子どもに対しては、時には他人的に接することも必要ではないで しょうか。それがないと、子どもは「よそゆき」がなくなって、内輪を外へ持ち出してしまうでしょう。
 そこで、まず、日常生活の中に社会的な要素を入れてみます。「おはよう」「いってまいります」「ただいま」「いただきます」「ごちそうさま」「お先に」「ありがとう」「すみません」「おやすみなさい」などを、その場、その場で、はじめは親が子どもに対していってやります。にっこり感じよく。
 子どもが幼児なら、たちまち、まねをして親とそっくりにやります。でも、小学校中学年ごろから、テレたり、反抗的になったりして、一度、身についたことをやらなくなります。それでも、親は、叱らないで、続けます。中学生、高校生、これまたやろうとしません。でも、親は続けます。そのうち、子どもも考え直してすっかり身についてしまいます。幼い時の躾の根が残っていたからでしょう。
 また、うちではやらない時期でも、外ではちやんとやることが多いものです。
 来客のあったとき、他家を訪問したとき、子どものマナーが悪いと親は叱りますが、そんなときは、他人に気づかれないように「こうなさい」と小さな声で教えましょう。
 外でたびたび失敗すると、気の小さな子どもは外出をきらうようになります。
 そして、外であわてないためには、日常いろいろの場面で、考えさせておくことが大切です。エチケットの基本は人間性の尊重ですから、相手の気持を 汲んで不快な感じを与えないように、また、自分が人間らしくふるまえるように。どんな場面で、どこに心を使うか、どう表現したら感じがよいかを応用問題として考えさせてみます。
 例えば、刃物のような危ない物を渡すときはどうするのがいいか、ひとが寝ていたらどこを通るのがいいか、他人の部屋へ入るにはどうしたらいいかなど具体的な場面で、感じの良いふるまい、感じの悪いふるまいを比較させてみるのもいいでしょう。こうして、好ましい態度、好ましい言葉づかいの基本にあ るものをはっきり認識させておきます。
 時代が変わり、マナーも変わりますが、人とのふれあいで、好ましいもの美しいものをと願うこころは変わらないはずで す。

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