公共の場の躾

 親や先生の指導を、最もまじめに受けとめて、それに従おうとするのが幼児と小学校低学年の子どもです。ここがすべての躾の出発点になります。
 しかし、幼児や低学年生は知識も不十分、理解力も未熟、繰り返し繰り返し実際の場面で根気よく躾ていかなければなりません。
 それに比べ、指導に添ってうまくやってくれるのが小学校中学年生。ただ、批判的にもなって、指導する大人がいい模範を示さなければ、本気でついてはいきません。
 そして、反抗的な中学生は、親の躾は、だいたい守らないのが普通です。先生にも「それをやったら点数を上げてくれるか」などと言います。だから、知識も意識もしっかりしたこの時期に集中的に躾ようと考えても、もう手遅れです。ただ、他人にはいい格好をしたがりますから、小さい時に躾てあれば結構やっているものです。
 というわけで、三、四歳から、手数、場数をかけて躾ていくのがいいでしょう。

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 「みんなが使うトイレだから、きれいにしてね」「みんなの遊園地だから、遊具は大事に使ってね」こんないい方をして、公共物に対する躾をしたと思いがちですが、これがなかなか難しい。
 なにしろ、幼児や小学校低学年の子どもは、この「みんな」の意味を誤解していることが多いからです。彼らは、みんなの中には、自分は含まれていないと思っています。みんな対自分、みんなの物はぼくの物ではない、というふうに思いやすい。
 そして、自己中心的なこの時期では、自分の物でないみんなの物なんてどうでもいいやと考えます。自分の物さえ大切にすればいいという気持ちです。
 そこで、まず、みんなの中には、自分も入っている。自分も仲間だという意識から育てていくのが順序です。
 それには、家族の一人として役割を与えて自覚させたり、友だち仲間の一人として責任を感じる機会を与えたりして、みんな意識を育てておくこと。家庭で特別扱いされたり、友だち仲間に入れなかったりでは、とてもうまくはいきません。
 「トイレ汚してはだめよ」「よそのへいにラクガキしてだめよ」と格好のいいことばかり教えられると、子どもは失敗したり、うっかりやってしまったら困ってしまいます。その結果、知らぬ顔の半べえをきめこむか、こそこそ逃げるか、人のせいにするか、とにかく、自分で始末をしようとはしないでしょう。
 むしろ、トイレは汚しやすいから、後から使う人がいやな感じがしないように、汚したら、こんなふうにしてきれいにしておきましょうと失敗の始末に重点をおく方が、躾としては役立ちます。また、自分でできない時は、大人の力を借りても始末するという習慣もつけるべきです。
 それには、失敗したときしかることよりも、その後始末を丁寧に教える方が大切です。
 立派な子ども部屋を与えられ、家の手伝いもしないで、何から何まで世話をやかれて育った子どもは、他人は自分のために気を使いサービスしてくれるものと思いこんでいます。
 したがって、他人よりも早く気をまわし、他人より早く気づ いて、みんなのために行動しようなどとは思いません。
 なかには、気づいていても、そんなことをするのは損だと思っているエゴイステックな子どももいます。損か得かが行動の基準になってしまっては、公共の場で筋のとおった行動などできるわけはありません。
 そこで、根本対策として、日ごろから、子どもに自発的、自主的な生活をさせること。さらに、周囲の人によく気を配るように躾けること。私どもが子どものころ、よく言い聞かされたのが、気働きをよくしなさいということでした。人様のために、いち早くその気持を察して、してあげることというわけです。
 たしかに、公共の場では、はじめに気づいた人が、行動を起こし、事を処理する義務があると思います。そのことを、現代の子どもたちに、もっともっと強調する必要があります。
 そして、子どもがいち早く気づいたとき、行動したとき、大いに高く評価して、ほめてやることです。それが支えになり、よい方向に向かってがんばる気を起こさせます。
 電車の中で、わが物顔に大声でふざけたり、走りまわったりする中学生位の子どもを見かけることがあります。まるで、自分たちの専用車ででもあるかのように。そして、周囲の人がどんな気持かを察するふうもない。私はこの鈍感さが恐ろしいと思います。
 講演会場に幼児を連れたお母さんがやってきて、一番前の席に座ります。と、私は困ったことになったと当惑します。きまって途中で、子どもは機嫌が悪くなり、泣いたり、暴れたり。講師も他の人もみんな、一人の子どもに振りまわされる。お母さんは知らん顔。
 子どもが声を出したら、さっと連れ出す親もいます。こんな人は、たいてい前の席は取らないで、出入口に近い席を取っています。
 また、子どもがおとなしくしているようなおもちゃをいろいろ用意してきている人もいます。こんなお母さんたちは、きっと他の場でも気持の細やかな行きとどいた躾をしているだろうと想像します。その親の振る舞いを長い間みて育った子どもは、公共の場でも、他人の思惑に敏感になり適切な行動もできるのではないでしょうか。
 電車の暴れ中学生を見る度に、私は講演会場の光景を連想してしまうのです。

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