よその子の躾

 よその子を叱るのは、とても難しいことだと思います。子どものしていることを見ると、どんな理由かしら、どんな意昧があるのかしらと考えて、つい、打つべき手があったはずなのに、そのチャンスを逃していることが多いような気がします。
 それに比べ、欧米人は、必要とあらば、よその子でも遠慮なく教えたり叱ったりしています。それに、見落とせないのは、叱るだけでなく、マメに褒めてもやり、なかには、わざわざ親のところへ行って「あなたのお子さんはこんないいことをして いて感心しました。上手に躾ましたね」などと親までほめている人もいます。他人の生活にはあまり干渉しない習慣なのに、子どもの躾は例外のようです。
 そこで、考えるのですが、外でよその子を躾けるには、それなりの条件が必要なのではないでしょうか。まず、その条件づくりからはじめることが必要だと思うのです。
 その条件の第一が、みんなに子どもは社会のものと考える共通理念があること。いわば、社会の大人全員が、子どもを立派に育てることに、連帯責任を感じていなければなりません。見かけた大人に指導の責任があることを、地域の集まりやPTAで話しあってみる必要があります。
 その二は、当の子どもにも親にも、他人の注意を受け入れる下地があること。外国では注意されると、全員とまではいかないが「ありがとう」とにっこりする子がいます。親も「わたしの気づかなかったことをご親切に」と感謝します。この下地がないと「うちの子によけいなお世話」となり、「よその子のことなんか知らないよ」になってしまいます。
 その三は、よその子を注意するときは、こちらの思惑、社会のあり方を強調すること。子どもの事情ばかり考えていては、チャンスを逃すのがオチ。事情はさておき、社会のしきたりはこう、こっちの感じたことはこうと強く主張して、社会正義、社会のマナーをとおす態度が大切なのでしょう。
 日本人は、細かいことにとらわれて、大筋を見落とす癖があると言われますが、これも同じです。
 しかし、子どもを国際社会で通るような人間にするために、この条件づくりをすることが急務でしょう。

スポンサーリンク

 注意する場合の技術的なことを考えてみたとき、知り合いのよその子と、通りすがりの知らない子では、多少区別が必要です。
 知り合いの子なら、よく事情を聞いてから、理解するところはしてやり、注意するところは事を分けて納得できるように話してやるのがいいでしょう。
 また「お子さんに、こんなとき、こんな注意をしました」と親に折をみて話しておくのが無難です。といって、わざわざことわりに行くのは大げさでいけません。
 そして、こんなとき決してしてはならないのが、その話を関係のないよその人にもらすことです。トラブルはここから起こるからです。
 また、知らないよその子に注 意するとき、小声で目立たないようにさらっと言うこと。「咳が出るから、そこをたたくのはやめてね。ほこりが出るから」とこちらの立場をやんわり主張します。時には怒鳴りつけたいような場面もありますが、子どもが聞き入れ反省してくれないのではなんにもなりませんから、気づかせ考えさせるように働きかけるのが無難でしょう。
 そして、いずれの場合も、こちらの立場、こちらの気持を主張して、そこが家庭ではなく、他人と共有している社会だということを気づかせることです。いわば自由の限界には他者が存在するということをです。
 ただし、知り合いであるなしにかかわらず、大声をあげて注意してやらなければならないのは、子どもが危険に陥っているとき。こんな場合は、一人だけでなく、見かけた大人が全員で協力するのが当然です。
 よその子を叱るというのは、大へんなことですから、よほど子ども思いの人でなければやれません。そこで、わが家の子どもに対して、親は「他人に注意されたり、叱られたときは、ありがとうといって感謝しなさい。あなたに何か言い分かあるなら、感謝の言葉を述べてからになさい」と躾ておくべきだと思います。
 むろん、親がそばにいたら、親もお礼を述べるべきです。「私が気がつかなかったことをありがとうございました」と。
 また逆に、親が子どもをしかっているとき、「お母さんのおっしやるとおりよ」と、親を支持してやるのも欧米人にはとても多いような気がします。彼らは親だけでなく、世間の大人たちがみんなそのとおりと言うなら、子どもはそれが社会のやり方だと思います。親だけでは反抗する子でも、大勢が加勢すれば、子どもも反省すると考えているようです。
 そして、なるべく、叱るだけでなく、マメによその子どものいい点を見付け出して、褒めてやりたいと思います。子どもの心理として、社会の大人の期待に応えられるように努力しようと意欲を起こすのはこんなときですから。
 また、その子の親がそばにいたら、「感心な子どもですね」と声をかけてやりたいものです。親もそれで躾の意欲を起こすはずです。
 こんなことを言うのは、私たちは、叱ることや教えることより、褒めること励ますことが、もっと下手だと思っているからです。

躾とは/ 躾と発達段階/ 家庭の躾・学校の躾/ 上手なしつけ方/ ほめ方について/ 叱り方について/ 体罰/ 過保護と放任/ 箸の使えない子/ 食卓のマナーが悪い/ 偏食、小食/ 食事の遅い子/ 排泄のしつけ/ おもらし/ 夜更かしと睡眠のしつけ/ そい寝について/ 物をしゃぶりながら寝る子/ 衣服が汚れても平気な子/ 脱ぎ着のしつけ/ 片付けのしつけ/ だらしのない子/ 友だちの物を平気で使ったり、持ち帰ったりする子/ 子ども部屋を作るとき/ 時間にルーズな子/ あいさつの躾/ 目上の人に対する言葉と態度/ 家族の一員としての躾/ 家庭のルールと躾/ 家での手伝い/ 勉強と手伝いの問題/ 小遣いの与え方/ 無駄使いをする子/ 物を粗末にする子/ 高価な物の与え方/ 子どもへのプレゼント/ 外での躾/ 公共の場の躾/ よその子の躾/ 他人の奉仕を躾ける/ 来客のとき/ 訪問のとき/ 留守番の躾/ 共働きの家庭の躾/ 家の中の事故防止/ 交通事故を防ぐ躾/ 水の事故を防ぐ躾/

       copyrght(c).子育てと育児.all rights reserved

スポンサーリンク