他人の奉仕を躾ける

 「日本の小学生」という本の中に、日本の子どもと諸外国の子どもとを比較したいろいろのデーターがのっています。一番心が痛むデーターは、日本の子どもがきわめてエゴイステックで、欧米諸国の子どもたちと比べ、ひどく見劣りがすることです。
 例えば、日本の子どもたちは、家の中の手伝いもしない、乗り物の中で年寄りや身体の不自由な人を見かけても席もゆずらない、学校の廊下や庭のごみも拾わない、よその国の子どもと比較したとき、いずれの場面でもとび離れて最下位、最低です。もし私が外国人の親なら、このデーターを見たら、きっと自分の子どもに話すだろうと思います。
 そのくせ、この本によると、日本の子どもは世界で一番自分の部屋を持っている率が高い。自分がもらうものはちゃっかりもらって、他人のためには何もしない。これはかなりのエゴイストです。これは現代の日本の子どもに共通した傾向です。だからしかたがないと言うのではなく、この問題は、学級父母会や地域の集まりなどで話題にして、みんなで考えたいと思うのです。

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 自己中心的と言われる幼児でも、三歳近くなると、身近な人に親切にしてあげようと一生けんめいになります。
 そして、五歳児ともなれば、他人の気持や立場に敏感になり、頼まれればかなり無理なことでも役立とうとがんばります。
 したがって、この時期が他人のために役立つ躾をは じめる最初のチャンスです。
 でも、親は手を貸してもらうことをあまり喜びません。「あなたにしてもらうと後が大度なの」「何もしなくていいから邪魔もしないでね」
 こうして、他人のために役立ちたい気持の芽生えをつみとってしまいます。この時、それが、親が何を頼んでも動こうともしない不精で自分かってな青年に仕立てる道だとは、つい気付かずに過ごしているのでしょう。
 他人のために役立つ喜びは、とても純粋で高貴なものですが、その喜びを奪っていることにも 気付きません。
 たとえ後始末が大変でも、能率が悪くても、子どもがやさしい気持で手を貸してくれたときは、「助かったわ、ありがとう」「とってもうれしかったわ」と大いに喜んでやることが、他人のために奉仕する道へつながる躾です。
 子どもは、自分の気持や行為が認められ、喜ばれたことに、大きな誇りと自信を抱き、それを常に心がけるようになっていきます。
 これがいわゆるプラスの強化といわれる指導法で、やってほしいことは、快い経験として印象づけ、その行動を強化する方法です。
 ひとりっ子というのは、この種の経験が不足かもしれません。兄弟が多ければ、他人にサービスしない子は、非難されたり、制裁を受けたり。それにお互いに認めてもらいたくてがんばりもします。
 このことは、近隣の子ども集団でも同じで、昔のように年上、年下さまざまの子どもがいれば、年上は下の子の面倒もみれば、役割も与えてやり、また、年下の子は上の子に認められたくて努力もする。いわば、こうして社会奉仕とは何かを学んでいったのでしょう。
 子どもにとって最も強力な指導とは、この種の体験学習です。親が教えられない微妙な人間関係のニュアンスは、このようなナマの経験の中で体得します。
 なにしろ、人の心がよめなくては、ぴったりした奉仕などできるわけはありません。
 そこで、お子さんにはなるべくナマの経験をさせていただきたい。近所の小さな子どものベビーシッターをするのも、動物を飼ってみるのも、よその年寄りの散歩の相手をするのも、お子さんの年令なら十分やれます。
 小学 校四年生の男の子が、近所の一人暮らしのおじいちゃんの世話をずっとしていたそうです。お母さんが作ったお惣菜を持って行ってあげて、おじいちゃんが食べる間、話し相手をしてあげる。食事がすんだら片付けを手伝って、それから自分の家へ連れてきて、おふろへ入れてあげる。そのおじいちゃんが病気になり息子夫婦に引きとられていきました。子どもは空家になったおじいちゃんの家の縁側に座って泣いていました。お母さんが迎えに行ったら「おじいちゃんがいてくれたから、ぼくは人に親切にしてあげることができたんだ。おじいちゃんは、いつも、ぼくにありがとうと言ってくれたけど、ほんとはぼくがありがとうと言わなければいけないんだよねえ」と話したそうです。
 実際の経験は、大きな喜びと自信を子どもに与えてくれます。まず、やらせてみることです。
 一まわり大きく成長するはずです。
 年長の子どもたちに対しても、私は、お金を手に入れるアルバイトをさせる前に、他人のために奉仕する経験をさせたいと思います。
 それは、子どもの他人のために何かできるという自己信頼感につながります。他人のために何かができて、はじめて一人前なのですから。

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