来客のとき

 私が訪問するたびに、自分の宝を持ってきて見せてくれたり、話しかけてくれたりした知り合いの家の息子さんがいました。そのころ彼は幼児から小学校の一、二年生だったと思います。人なつこい愛らしい笑顔の子どもでした。私もそれを楽しみにしていました。
 小さな子どもが、自分が大切にしている物を見せてくれるの は、かなり好意と親しみを感じている客に対してだと思います。ただ、客の方はお子さんが好意や親しみを寄せていると思ってくれるとは限りませんので、「好きなタイプのお客様がいらっしやると、こうして宝物をお見せするんです。きっと、お近づきのしるしにと言う気持ではないでしょうか」と、客も好感を抱いてくれるように大人が説明するといいでしょう。
 人間味のある人なら、だれでも子どもの好意には感動しますし、それを長い間記憶していて、析にふれて思い出し、その成長 ぶりを楽しみにしてもいるものです。
 したがって、お子さんがひどく失礼なことをしたと思う必要はありません。もし、客が子ども嫌いの人なら、子どもは敏感 で一回限りでその後は近寄ってはいかないはずです。

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 来客がどの程度のつきあいの、どんなタイプの人かをよく説明してやり、子どもの気持に訴えて納得させておくのがよいと思います。
 「今日のお客さまは、お父さんのところへお仕事のご用でいらっしやるの。だから、早く間違いのないように、ご用をすませたいと思っていらっしやるでしょう。あまりお話したりして邪魔をしないようにしましょう。」「今日のお客さまはお年よりなの。ですから、やさしくいたわってあげましょうね」
 客の気持を話してやれば、子どもなりに考えます。ただ、「出てこないでね」と言われると、かえって興味をもって、のぞいたり、騒いだりして逆効果になります。
 また、小学生になれば、来客によって、あいさつだけで座を外すとか、サービスを手伝わせるとか、いっしょに歓待するとか、あらかじめ打ち合わせておいて、その手順どおりに行動させることもできます。
 欧米の家庭では、子どもを別室へ入れて、来客の邪魔をしないように躾ていると言われますが、これも、来客や接待の形式によりけりで一様ではありません。さして親しくもない人まで招待するような家庭パーティーなどでは、子どもは除外され、幼児ならたいていベビーシッターに預けられます。
 でも、家族単位の親しいつきあいでは、子どもも同席するのが普通で、客の方が「スージーはどうしましたか」などと、姿の見えない子どものことを尋ねたりします。家庭を訪問するからには、家族全員に会うのが楽しみですから、子どもを出さなくては、かえって客を失望させます。
 もっとも、食事は小さい子どもだけ先にさせて、その後別室で遊んでいる間に、大人がとります。これは日本も同様でしょう。ただ遠うのは、住まいが広くゆとりもあって、子どもが多少大声を出しても聞こえないこと。逆に、大人たちの声も子どもに聞こえないので、双方、影響が少ない点です。
 だが、日本の住まいではここが難しくて、遠ざけようとしても、気配もすれば声も聞こえて、何かと子どもの好奇心をそそります。しかも、社会性の伸びはじめの幼児は、むやみと他人への関心が高く、来客となったらかならずやってきて、珍しいものでも見るように、じっと眺めたりするのが普通です。
 そこで、遠ざけようとすればするほど逆効果。むしろ、きちんとあいさつをさせて、客に話しかけられたら、ちゃんと受けこたえするように指導する方がいいでしょう。時にはサービスに一役かわせて、「おしぼりを運んでね」「果物をお出しして」と、失敗しない程度でやらせるのもいい手です。
 大人が来客の接待に心を奪われると、子どもは敏感に自分への関心が薄れたことを感じて、日ごろしないような変わったこと、目立つこと、困ったことをやり出します。こうして注目を集めようとするのです。子どもによっては、この時とばかりわがままを言い、物をねだる。と、親は恥ずかしさから、事を早く納めようとして、ついその手に乗せられてしまいます。でも、一度昧をしめた子は、またこの手を使います。
 そこで、親は客にことわって、子どもを別室へ連れていき、いつもの方針どおりに躾けることが大切です。客も、親が子どもに乗じられるのを見るより、きちんと躾けるのを見る方が気分がいいと思います。
 また、どんなに未客好きな子どもでも、じきにあきて退屈し、だだをこねることもありますから、そんな時のために特別のおもちゃを用意しておくことも必要でしょう。

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