教科書の採択

教科書の法制度の原則は、地方分権的です。学校教育法は、各学校の教科に関する事項は、監督庁がこれを定めるとし、同付則で、監督庁を当分の間文部大臣として、本来的には、検定をも教育委員会の権限とし市町村教育委員会の、教科内容、教科書採択の教育事務を明記していた同法改正後、地方教育行政の組織及び運営に関する法律でも、教育委員会の職務権限として、教科書その他の教材の取扱を規定していて、大幅な変更はないとみるべきです。
ところで、教科書採択の実質的仕組みは、義務教育諸学校の教科用図書の無償措置に関する法律が規定しています。同法は、憲法二六条の義務教育無償の原則を具体化するものとして、確かにそれ以前の部分的措置に比べれば画期的なものですが、発行採択制度を中央集権的なものに変更していて問題があります。採択に関しては、都道府県教育委員会に大幅に権限が集中されているのが特徴的です。

スポンサーリンク

都道府県教育委員会は、教科書の適正な採択をはかるため、研究を計画実施し、教科用図書選定審議会を設置し、その建議にもとづいて、市町村教育委員会や国、私立義務教育学校の校長の行う採択に関し、適切な指導、助言、援助を行う。また同委員会は、市町村委員会の意見をきいて、市または郡の区域あるいはこれらの区域を合わせた地域で、採択地区を設定し同一地区内の市町村委員会は、選定審議会の意見、都道府県委員会の指導助言によって、協議により種目ごとに同一の教科書を採択しなければならない。採択地区の設定、変更にあたっては文部大臣への報告が必要です。採択期間は政令によるものとされ三年間と定められています。このほか、特別区、指定都市に関する規定がある以上の採択方法によらなければ、教科書の無償給付は行えません。
都道府県教育委員会は、学校長や教員、教育委員会事務局などの専門的職員、学識経験者から委員定数三分の一ずつの選定審議会委員を任命し、同審議会は、教科書採択の基準や資料の作成、指導助言等に関する重要事項を建議します。国は、以上の経過で採択された教科書を、義務教育学校の設置者に無償で給付し文部大臣は、無償給付の実施状況を調査し、学校設置者に対して必要な報告を求めることができ、都道府県教育委員会に対しても同様の調査、報告を求めることができます。従来の教科書採択は、市町村教育委員会が教員の意見をきいて数種の教科書が選定されていましたが、無償措置法は、市町村をこえる広域採択地区ごとに同一一種の採択を義務づけるもので、採択面からも教科書を統制するものとの批判があります。
現行の採択状況をみると、法の規定よりもさらに問題点を含んでいます。採択区域は、供給の円滑と価格の低廉などの教育的意義とは無縁の理由でより広域化され、府県教育委員会の地方事務所単位に設定されるなどして問題があります。また、採択において実質的に重要な役割を果たす選定審議会は、採択の公正を期するという理由から、審議内容、建議事項、委員氏名等がほとんど非公開とされていて、住民等の意向が反映されにくいものとなっています。採択される教科書は、全国的にみても大手の教社のものが圧倒的に多く、独占的状況といえます。採択過程を公開とし、教職員、父母住民の意向を反映できるような、採択区域の細分化等の民主的採択制度を求める声があがっているのは当然でしょう。現行法制の枠内でも部分的な改善は可能であり、重要な課題といえます。

教育内容の意義/ 教育課程/ 教科書の検定/ 教科書の採択/ 教材と教具/ 教育評価/ 教職員の意義と範囲/ 教職員の資格と免許/ 教員養成/ 教職員の身分と職務/ 教職員の政治活動の自由と労働基本権/ 学校施設の意義/ 学校事故の意義/ 学校事故と補償/ 社会教育の意義/ 社会教育と住民/ 社会教育施設/ 社会教育職員/ 社会教育関係団体/ 教育と自治体/ 国と自治体との関係/ 都道府県と市町村/ 自治体と教育委員会/ 私学や保育の関連行政機関/ 教育委員会制度の意義/ 教育委員会の組織と権限/ 学校管理規則/ 都道府県教育委員会と市町村教育委員会/ 教育長の地位と権限/ 指導主事の地位と権限/ 中央教育行政の意義/ 国の教育行政機関/ 文部科学省の権限/ 教育費の内容/ 教育費の財源/ 子どもと親権者の地位/ 親権者の権利と義務/ 両親のいない子どもの教育権者/ 少年法の目的と内容/ 学習権と保護処分/ 少年法の法制/ 児童憲章と教育法/ 教育奨励法制/ 障がい者教育/ 教育労働と教育法/ 勤労青年教育と教育法/ 企業内教育と教育法/ 安全通学の保障/ 信教の自由と宗教教育/ 私立学校と宗教教育/

       copyrght(c).子育てと育児.all rights reserved

スポンサーリンク