学校事故の意義

学校事故というのは、子どもが廊下で転んだ かすり傷 程度から、体操の時間に鉄棒から落ちた骨折や技術科の授業の際の指の切断、放課後クラブ活動中に野球のボールがあたって生徒が死亡した事故、あるいは運動会や修学旅行中の事故など、主に児童や生徒が学校教育に関する活動中に身体的障害を件った事故をいいます。そのような学校事故がいまや社会的な大きな問題となっています。それは次のような理由からです。
一つには、近年、学校事故の数が激増しているためです。それで学校事故をこれ以上増やさないようにするためになんらかの安全対策が樹てられなくてはならないという自覚が高められたからです。
二には、このように学校事故が激増しているにもかかわらず、現在の日本では、事故による被害者の救済制度が不十分だからです。
現在、学校事故の被害者に対する救済制度として用意されている公的な制度としては、日本学校安全会の災害共済制度があるだけです。この制度は、父母の掛金と若干の国費を基金とする共済給付制度で、被害者の医療費の一部負担と死亡や廃疾などの重度障害に対する見舞金給付を主たる事業とするものであり、国や地方自治体が責任をもつ形での被害者の実質的な救済つまり被害者の損害に対する完全補償をこの制度に期待することはできません。そのために廃疾などの重度障害となった被害者の医療費や養育のために多大の労力や費用を父母に負担させる結果となり、父母の健全な家庭生活そのものまで犠牲にさせている例が相当な数になっています。

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したがって、より実質的な救済を求めるとすれば、被害者の父母は、本来そのために用意してあったものではない民法や国家賠償法などによる損害賠償制度を利用することにならざるをえません。その場合は、国や地方自治体に損害賠償請求をする形での裁判を提起するということとなります。しかし、民法や国家賠償法などによる損害賠償を裁判所が認めるのは、公務員に過失があった場合にかぎられます。しかも、その過失の立証は裁判を提起する原告(被害者)の側にあり、それには大変な困難を件います。したがって、必ずしも裁判の勝訴は見込めず、この形を採りさえすれば被害者の実質的な故済が可能となるというわけにはいかないのです。
しかしながら、やむなく裁判の提起をする例も多くなり、近年では、裁判所が公務員の過失を認めて国や地方自治体に損害賠償を命ずる判決例も多くなってきました。そして、その損害賠償額もしだいに多額となっています。
そこで、特に地方自治体では、いつ起こるかもしれない学校事故の、しかも一度に多額の損害賠償金の支出を余儀なくされることに対処して、近年から、学校管理者責任賠償保険制度を発足させるようになりました。これも一つの救済制度といえます。しかし、このような保険制度は、学校事故の被害者が直接保険会社に損害賠償金の支払いを請求しうるというものではなく、被害者の実質的な救済をするための根本的な解決にはなりえないのです。
三には、このような被害者からの損害賠償請求が数多くなり、それに伴って裁判所が公務員の過失を認めるうえで損害賠償を命ずる判決例も多くなると、学校では教師らは、教育活動における過失の責任追及を受けることを嫌い、いきおい教育活動を消極化させるようになります。児童、生徒にけがをさせないようにと跳び箱すら使わせないようになったり、教師はクラブ活動を指導する責任を手控えたりするようになります。したがって学校では、児童、生徒に「休み時間もできるだけ校庭には出ないように」とか、「放課後はすぐに帰宅するように」などというように、児童や生徒の活発な活動を制限ないし禁止することばかりを多くするようになり、教育活動そのものまで萎縮させるようになります。そのような学校では、だから「受験勉強のために休み時間中も教室にいて勉強している」という児童、生徒を多くさせます。それが全国的な一般的傾向となっているとしたら、それ自体が見逃しえない社会問題となります。つまり、はたして学校とは何か、教育とは何か、という根本的な教育のあり方の問い直しをせざるをえなくなるのです。日本の学校事故の救済制度の不備が、そうした問題にまで大きな影響をおよぼす一因となっているのです。
総じていえば、このように学校事故は、もはや交通事故数をはるかにこえるほど年々増加しているにもかかわらず、被害者の救済制度が不備であり、かつ、そのために学校の教育活動を萎縮させているという点などが、学校事故について社会的に問題とさせる要因となったといえます。
そのような問題状況は、憲法によって保障された 健康で安全な 教育を受ける権利が現実には保障されていない状態といえるのです。一日も早く、無過失責任主義を建前とする学校事故の完全かつ迅速な補償を目的とする「学 校災害補償法」の判定が期待されます。

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