学校事故と補償

学校事故による被災生徒等またはその保護者等の被害を救済するために有用な補償を目的とした制度としては、日本ではいまだ十分に満足できるものはありません。この被害を完全かつ迅速に補償することは、生徒等の教育を受ける権利を保持するうえで必要欠くべからざることです。また、この補償の不十分さのために、被災生徒等の負担の重圧化はもとよりのこと、学校の教育活動が消極的になり、萎縮させるまでになっており、放置できない状態になってきています。
しかも、現在の補償救済制度はかなり複雑であるため、被災生徒等は、被害の救済を受けるためにいろいろの方策を講じなければならないのが現状です。その主なものとして、日本学校安全会の災害共済給付、保険、見舞金および損害賠償請求があります。

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日本学校安全会は、日本学校安全法によって、昭和三五年三月一日に設立された特殊法人であり、学校教育の円滑な実施に資することを目的として災害共済給付事業を行っています。この事業は、義務教育諸学校、高校、高専、幼稚園および保育所などで災害共済給付契約を締結した学校の管理下における児童、生徒の災害、すなわち負傷、疾病、廃疾または死亡に対して、必要な一定の医療費、廃疾見舞金または死亡見舞金を支給することを内容としています。しかも、この共済給付は、その財源が国の援助があるとはいえ、おもに学校設置の分担金および保護者の共済掛金でまかなわれているから、共済給付に加入した学校設置者ならびに保護者の互助共済の性格の強い制度です。しかし、この共済給付は、原則として災害がいかなる原因によろうとも学校管理下の災害であればすべての場合に給付される点で補償的性格を有するといえます。なお、この災害共済給付制度は、掛金の保護者負担主義の撤廃、加入対象学校の拡大、給行金の支給基準および額の改善の点で検討すべき問題を残しています。
近年、学校事救による災害にモなえるために各種の保険が創設され活用され普及しています。その原因は、日本の救済法制の貧困と、これをカバーするために生徒、保護者とか学校設置者、教師とかが災害による負担を自己防衛的に解消するようになってきているからですが、さらに、本来的に災害の救済手段として保険が現在のところ最も適格であるとの認識が定着してきたからです。
学校事故の被災生徒の医療上の救済として、社会保険(健保、国保、共済組合保)による療養給付が利用されている(医療保険)。被災生徒がその保険の被扶養者であれば療養に要した費用の七割が支給されます。なお、大学、学部が学生健康保険を創設し、被災学生がその保険組合に加入し組合員となれば、社会保険と併用することにより療養費用の全額の医療給付が受けられます。
傷害保険は、いわゆる怪我専門の保険であって病気の保険ではありません。これは、被保険者(生徒等)が急激かつ偶然な外来の事故により身体に傷害を負った場合に、医療、後退障害、死亡保険金を保険会社が支払うことを約する保険です。この保険は、不慮の事故にそなえて生徒等が自己の負担(保険料)において自己防衛的に危険を担保しておくために利用されるものです。スポーツ安全協会傷害保険、学童団体傷害保険および学生教育研究災害傷害保険(学徒援護会)など団体のものが売られています。
賠償責任保険は、賠償金の支払いを肩代りしてもらう保険です。すなわち、この保険は、被保険者(学校設営者、教師等)が他人(生徒等)に対して法律上の損害賠償責任を負担することによって被る損害を保険会社からの保険金で填補することを約するものです。この保険は、被保険者が保険料を支払っておけば、不慮の賠償金の負担から守られる制度ですが、あわせて被害者(生徒等)保護にも役立っています。団体の賠償責任保険として、全国市長会(町村会)学校管理者賠償責任保険、都道府県立学校管理者(幼稚園、保育園)賠償責任保険、および体育、スポーツ指導者賠償責任保険などがあります。
見舞金は、元来、災難を受けた者(生徒等)を見舞うために贈られるいくらかの数額の金銭です。この見舞金は、近時、地方公共団体の条例、要綱で、または任意団体たる互助会等の規則によって制度化されてきているものも少なくありません。
前述の給付金、保険金で満足できないとか、それらが受けられないときは、損害賠償請求に踏みきらざるをえません。
債務不履行責任は、債務者(学校設置者)が在学(就学)契約に付随して債権者(生徒ないし保護者)に対して負っている生徒安全確保義務を故意、過失など(この点の証明責任は債権者にない)債務者の責めに帰すべき事由によって試行しなかったために生徒等が損害を受けた場合に(債務不履行)、債務者がその損害賠償責任を負わなければならないものです。この責任は、在学契約が認められなければ適用されません。一般に、債務者は、その義務の履行補助者たる教師に、または債務者自ら過失がある場合にこの責任が問われます。
不法行為責任は、違法に生徒の生命、身体等の利益を侵害して損害を生じさせた場合に、被害者(被害生徒およびその保護者等)に対し加害者がその損害賠償義務を負担しなければならないものです(不法行為責任)この責任も、過失責任主義を原則としています(その証明責任は、原則として被害者にあります)ただし、学校設置者は、自己に過失がなくとも教師に生徒保護監督(安全保持)義務上の過失があればまたはその施設、設備の設置、管理上の瑕疵があれば賠償責任を負わなければならないことがあります。

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