教育委員会の組織と権限

教育委員会は、地方事務たる教育事務に関し長から独立した権限を行使する合議制行政機関です。原則として委員長を合む五人の委員で組織されますが、現行制度の委員選任方法は地方議会の同意を得て長が任命することになっています。委員の資格要件としては、長の被選挙権者でかつ三人以上が同一政党に所属しえないという欠格条項のほかは「人格高潔で教育、学術、文化に関し識見を有する者」とされるにすぎないので、長の裁量の範囲がきわめて広い。また、長の選挙権者は、長に対し委員の解職を請求でき、長はその要旨を公表、議会に付議し、議会の同意を得て委員は失職することになっています。これらの仕組は国民主権原理、教育行政の国民全体に対する直接責任の原則に十分なじまないので、立法論としては再検討を要しますが、委員の選任にあたっては、与党政治の政略的影響から脱する工夫や準公選制など、住民意思を直接反映するに必要かつより有効な制度の探求が強く求められます。さらに、現行制度は、教育長を教育専門職として法定せず一般行政職化する傾向もあるので委員に教育の専門家を加える配慮も必要となります。また、委員の報酬および費用弁償は条例で定められますが、非常勤とはいえその職責は住民意思との直結を要する重要なものであるので、委員の名誉職化を避け、その日常活動を保障する見地からの配慮も必要です。なお、行政庁としての教育委員会には内部部局として事務局がおかれ、教育長が両者の接点をなします。教育委員会とは、これらの総体を指して広義にとらえられることもあります。

スポンサーリンク

教育委員会の権限は、五人の委員の合議体に授権されるため、その権限は、会議の開催、議決を通して行使されるのであって、個々の委員に付与されるのではありません。会議規則は、教委規則として自治的に定めることになっていますが、教育行政の直接責任、住民自治の見地から、会議の公開と議事の予告主義について詳細に定めることは条理上当然の要請です。なお、会議の主宰者は委員長ですが、委員会の事務執行責任者は教育長です。議案提出権は一部教育長にもあるといえます。
教育事務(地方事務)は、各教育委員会により、自治的に管理、執行されます。そのような教育委員会の所掌事務、権限は、地教行法二三条に概括的に列挙されているほか、法令によりその権限に属するものも少なくありません。現行制度は、これらの事務処理上の法令準拠主義の明示「法令又は条例に違反しない限度」の教委規則制定権規定、法令違反等の場合の文相、都道府県教委の措置要求等、教育委員会の権限行使に一定の制約を加えていますが、しかし、教育行政の地方自治原理とその権限行使の態様(合議制)の性質上、法令の解釈、適用の権限は、各教育委員会にあるのであって、国の行政機関がその公定解釈を指揮命令することはできないと考えられます。法令違反等の場合の措置要求もその内容はせいぜい勧告にとどまるものと解されます。それゆえ、各教育委員会が自らの判断で自主的に教育委員会規則を制定し教育事務を管理、執行していく余地は決して少なくはないといえます。
文部省は、学習指導要領の法的拘束性を主張し教育委員会にもその遵守を要求しますが、教育課程事務が教育委員会の職務権限に属する以上、法令をどう解釈しこの事務をどう処理するかは、憲法、教育基本法の諸原理に照らして各教育委員会が自主的にきめうるところです。例えば、京都府教委は、人間の尊厳、人権尊重を基盤とする「平和と民主主義教育」実現のために「各学校においては、その意義とねらいを明らかにし、学習指導要領や教科書はもとより、それぞれの教材についても、平和、民主、人権、科学の観点から徹底的な検討を深めて、的確な指導を行う必要がある」という方針をとりつつ、他方では、自ら「到達度評価への改善を進めるために」「到達度評価への改善の第二年次の実践研究を進めるために」などの研究討議資料を発表し、これらを「参考資料として、地域、学校の実践を点検し、今年度の実践課題をたててその実践を進め、互いに交流しながら府下共通の基本的指導事項とその到達目標を具体化し、より豊かな内容に練り上げ、一定の基準の作成に迫ることが課題である」としています。このように、教育委員会と国の教育行政機関、各学校との関係を直接責任原理を具体化するよう組織し、教育内容行政を教育自治的に推進することは、教育委員会の本来の責任であって、各地域の実情に応じた多様な努力が求められてよい。その場合現行法制の法論理として、教育内的事項については法的拘束力ある命令監督は許されないことにあらためて留意すべきです。
教育の内的事項と区別される外的条件の整備の面で教育委員会は、教育の専門的自律性と国民全体に対する直接責任性を自覚し、教育の目的達成のために、教育の内的論理に十分応えるよう働かなければなりません。しかし教育外的事項の基本をなす教育予算については財政議決主義がとれら、議会制民主主義にもとづく国や教育機関開設者の法的決定権が一応存するので、このような現行法制の制度的条件を踏まえたうえで、教育委員会の権限を見直すことが必要です。文部省、都道府県教委、地教委の相互関係でみるとたとえば、勤評は地教行法四六条の規定にかかわらず未実施団体があり、同法四四条の職階制の条例も未判定です。しかし、来制定だからといって法に反するわけではなく法令違反を文部省から間われる監督システムは存在しないといえます。また、教員人事についていえば、県費負担教職員の任免その他の進退に関しては市町村教委の内申をぬきにこれを行うことができない。教育委員会と学校の関係でみると外的事項については教育委員会の権力的決定が一応否定できませんが、外的条件整備行政は教育の側の要求に十分応えなけばならないと考えられるから教職員や住民の行政参加を教育慣習法的に形成する余地は十分あるとみられ、その探求を必要としているといえます。
教育委員会の管理、執行する事務のうち、法律またはこれにもとづく政令によりその権限に属する「国、他の地方公共団体その他公共団体の事務」のことを通常機関委任事務とよび、地方自治法別表第三および第四にそれが列挙されています。教育委員会は、機関委任事務の管理、執行につき文部大臣の指揮監督を受けることになっています。しかし、何か機関委任事務であるかは必ずしも一義的に明白ではなく、個々の法律が国等の指揮監督を具体的、明確に規定している場合にのみそれは国等の機関として処理する事務と解されるという解釈も成り立つはずです。それゆえ、多くの事務の場合、地教行法五五条等にいうその指揮監督の法的性質は、同一行政主体内部における上級行政機関の下級行政機関に対するそれと同様のものと考えるべきではなくむしろ一種の行政指導的性格のものと解していくことが正当です。

教育内容の意義/ 教育課程/ 教科書の検定/ 教科書の採択/ 教材と教具/ 教育評価/ 教職員の意義と範囲/ 教職員の資格と免許/ 教員養成/ 教職員の身分と職務/ 教職員の政治活動の自由と労働基本権/ 学校施設の意義/ 学校事故の意義/ 学校事故と補償/ 社会教育の意義/ 社会教育と住民/ 社会教育施設/ 社会教育職員/ 社会教育関係団体/ 教育と自治体/ 国と自治体との関係/ 都道府県と市町村/ 自治体と教育委員会/ 私学や保育の関連行政機関/ 教育委員会制度の意義/ 教育委員会の組織と権限/ 学校管理規則/ 都道府県教育委員会と市町村教育委員会/ 教育長の地位と権限/ 指導主事の地位と権限/ 中央教育行政の意義/ 国の教育行政機関/ 文部科学省の権限/ 教育費の内容/ 教育費の財源/ 子どもと親権者の地位/ 親権者の権利と義務/ 両親のいない子どもの教育権者/ 少年法の目的と内容/ 学習権と保護処分/ 少年法の法制/ 児童憲章と教育法/ 教育奨励法制/ 障がい者教育/ 教育労働と教育法/ 勤労青年教育と教育法/ 企業内教育と教育法/ 安全通学の保障/ 信教の自由と宗教教育/ 私立学校と宗教教育/

       copyrght(c).子育てと育児.all rights reserved

スポンサーリンク