教育長の地位と権限

地方教育行政の組織及び運営に関する法律に定められた機関である教育長は、教育委員会と不可分の関係に立つので、その地位と権限は、教育委員会の歴史を踏まえつつ、同委員会との関連で検討されねばなりません。
教育委員会法時代の教育委員会は、戦後教育行政の原則である「教育の地方分権、自治」を実現するにふさわしい位置づけをされていました。そして教育長については、同法案の審議で政府側委員は、教育委員会を最高の存在としたうえで、教育長の性格を「教育委員会の指揮監督を受けて、その下において事務をとる人」と答弁しています。これに明らかなように教育長は、教育委員会の使命遂行を補助する機関と位置づけられていたのであり、かくしてその権限もこの位置づけにもとづいて解される性格のものでした。教委法で、教育長は教育委員会によって任命され、その要件は、教育的識見を有し、教育職員免許状を保持する者とされていたことは、以上の位置づけと密接に関係しています。
しかし教育に対する国家統制の道を開くべく制定された地教行法は、教育委員会を公選制から任命制へと再編し、文部省、都道府県、市町村の間に上下関係をもうけ、教育長職もその方向で再編されました。それを端的に示すのは、教育長の任命方法の変化です。すなわち都道府県の場合は、その委員会が文部大臣の承認を得て任命し、市町村の場合は、都道府県教委の承認を得て委員中から任命することとなりました。他のいずれの地方行政機関にも類例をみない国家によるこのような不当な人事介入の理由は、「教育行政の国、都道府県、市町村一体としての運営」を確保するためとされましたが、それが、新憲法、教育基本法のうちたてた教育行政原則を破壊しようとする意図をもっていたことは、その後の歴史が示すところです。

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教育長は、職務上、教育委員会の補助機関であり、かつ委員会の事務局の長たる地位にあり、法律上の身分は、教育委員とことなり、原則的には地方公務員法の適用を受ける一般職公務員で、同時に教育公務員特例法の適用を受ける教育公務員です。
このような地位と身分をもつ教育長に認められた権限は、大別すると教育委員会への専門的助言者としての権限、教育委員会の首席補助執行宮としての権限、教育委員会からの権限委任、または代理権授与による委員会代行者としての権限、となります。これを具体的に示すと、教育委員会への助言権、教育委員会の事務局職員、教育機関職員の推薦権、教職員の任免等の内申助言権、校長、教員の採用、昇任に関する選考権、指導主事、社会教育主事の選考権、社会教育委員、公民館長等の推薦権、教育委員会の権限に属する全事務の補助執行権、事務局の事務の統括、同職員の指揮監督権、教育委員会規則による委員会からの委任事務の執行、臨時代理執行、事務局職員への再委任、都道府県の教育長の市町村教委、または教育長への一部事務委任、およびその指揮監督権などがあります。
以上にみたように教育長の権限は、広範にわたっており、地教行法制定以後の反動的な教育行政の一環をになってきたことは否定できません。しかし、地教行法は、戦後教育行政の原則を全面否定することはできず、二つの教育委員会制度は残されました。かくして現行法においても、憲法、教育基本法に掲げられた教育行政理念を実現する行政主体は教育委員会であり、教育長は、委員会の補助機関であると位置づけられていることは疑いをいれません。
このことからして教育長の権限は、基本的には教育委員会の補助機関としての存在から認められたものである、という点に留意する必要があります。教育長の職務権限規定の冒頭の条項「教育長は、教育委員会の指揮監督の下に、教育委員会の権限に属するすべての事務をつかさどる」は、この点を示しています。結局教育長の権限は、会議制執行機関としての教育委員会の指揮監督のもと、補助機関の立場から、同委員会の任務遂行のために行使されなければならないのであって、委員会をして従属機関たらしめるような権限行使があってはならないのです。同時に権限行使にあたって遵守されるべきは、教育行政原則をさし示している憲法、教育基本法などの諸規定であり、かつ教職員等の諸権利を規定している憲法、労働基準法、国家・地方公務員法、教育公務員特例法などです。
例えば、教育委員会に対する教育長の助言権は、教委法当時に比較してより強められてはいるが、それをもってして委員会を支配しうるような権限ではけっしてなく、あくまでも委員会の意思形成が円滑になされるための助言にすぎません。助言権の解釈にあたっての基本視点は次の点にあります。「委員会の重要性はあくまで民意の反映と教育の自主性の尊重にあり、そこに行政委員会としての意義が存するのです。教育長の助言は、その意味でいたずらに委員会の自律性を拘束するものであってはならない」

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