子どもと親権者の地位

親権は、未成年の子に対する監護教育を目的として父母に認められた権利、義務です。
すべての家族が家長の権力に服していた封建的な家制度のもとでは、親権は家長権に吸収され、独立の存在をもたなかったことに加えて、「家ハ法律ノ及フ所ニアラス」として、この家長権は近代的な法的関係を排除したところに成立する「神聖ニシテ侵スヘカラサル」権威でした。親権は旧民法(明治三一年)によって、未成年の子を監護教育する父または母の権利義務として法制化されたが、第一次的親権者を父としたり、子が年齢のいかんにかかわらず独立の生計を立てるまでは親権に服するものとしていたなど、なおも父権的性格をもち、家ないし親の利益が中心におかれていました。
現行法は、宗族生活における個人の尊欧と男女の平等の原刑にもとづいて、家制度を廃止し、父母が婚姻中において共同して親権を行使するとしました。また、子にたいする支配権的性格が希薄化し、親権は、子の監護を目的とする親権者の権利義務として理解されるようになり、子の利益、福祉が強調されるようになってきています。
このように、一般に、親権は、家のため、親のための親権から子のための親権へと進化してきたといわれていますが、今日ではさらに進んで、親の子に対する権利義務の体系として構築されている現在の親子関係を、子どもの権利の体系として再構成することが、民法学における課題とされるにいたっています。

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民法学において、かつては親の子に対する権力として理解されていた親権が、こんにち、子どもの利益を基調として履行されるべき子を監護教育する親の義務として理解されるものとの見方は、一般の承認するところとなっています。しかし、それが誰に対する義務か、という点で、説が分かれます。
親の義務を、子に対するものではなく社会ないし国家に対する義務であるとするこの説は、戦前および戦後の一時期まで支配的であった説で、教育を受ける客体として子どもをとらえることによって、子とともに、子に教育を受けさせる義務を負う親権者に対して、国が教育権者として存在しうることを許す基礎を与えるものであったことに問題がありました。
親権(親義務)を、親の子に対する私法上の義務であるとするこの説は、子どもの人権の尊 重という点において積極的意味を持ちますが、子どもが社会的存在であり、児童福祉法や学校教育法にもとづいて、親義務の履行を国が監視する制度がある以上、民法の枠内でのみ解釈論を展開して、親子関係を純粋な私法上の関係とすることにおいて弱点があります。
両説における問題点の克服は、親権にかかわる子ども、父母、国などの諸主体の関係を、それを規律する諸法規との関連のなかで、明らかにしていくことによって可能となります。この点で、最近、教育法学の立場から、子どもの教育を受ける権利を中心に、子どもに対する親権者と国との位置づけを再構成する試みがなされていると同時に、民法学においても、親権概念の構成にあたって、他の法領域との共同作業の必要性が論ぜられていることは、注目に値することがらです。
この視角のもとに、教育の問題を例にあげて、子ども、親権者、国の関係を子どもの利益を中心にして総体的にとらえるならば、親権と親権者の地位は次のように理解されることになります。
第一に、子どもに対する関係において、監護及び教育をする権利、義務を有する親権者の地位は、一方で、子どもの学習し教育を受ける権利に対応してこれを保障するものとしての、子どもに教育を受けさせる義務者であると同時に、他方で、子どもが社会的人格として成長すべきとする教育の理念、目的の範囲内で、子どもに教育を受けることを拘束し監視する権利者となります。さらに、近年では、親権者の義務に対応して、親権者による子どもの権利侵害を回復し親義務の不履行に対して履行を請求する子どもの権利が主張され、そのことによって、親権者を、子どもの請求権の名宛人たる地位におく、とする見解もあります。
第二に、国との関係において、親権者は、一方で、国による子どもの権利の保障および侵害の回復を子どもにかわって求める権利者として存在し、他方、親権者による子どもの権利の侵害または就学義務の不履行にさいして、国は親権者の責任を追及しうる地位にあります。
従来の民法学のように、民法の枠内でのみ親権を論じるとすれば、このような親権内容と親権者の地位を把握することは困難です。現在、民法学にたいして、他の法領域における親権内容をも包接しうる親権概念の再構成が要請されているのです。

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