少年法の目的と内容

少年法は非行少年に対する処遇のあり方と手続を定めた法律であり、刑法、刑事訴訟法とならぶ刑事三本法ですが、その適用対象の特質にもとづき、教育法学の立場からも把握されなければならない諸側面を有します。司法はその目的について、直接的社会防衛や自由権制限などを第一義的なものとせず、遂に少年の健全育成を目標とすることを宣言します。すなわち同法一条は、「この法律は、少年の健全な育成を期し、非行のある少年に対して性格の矯正及び環境の調整に関する保護処分を行うとともに、少年及び少年の福祉を害する成人の刑事事件について特別の措置を講ずることを目的とする」と述べています。
ここで「健全な育成」とは、教育基本法一条の示す「心身ともに健康な国民の育成」であり、児童福祉法一条、二条の示す「心身ともに健やか」な「育成」です。そのことは、教育基本法二条が、その教育目的が「あらゆる社会に、あらゆる場所において実現されなければならない」と命じ、児童福祉法三条がこのような育成と育成責任の原理を「すべて児童に関する法令の施行にあたって、常に尊重されなければならない」原理としていることからも明らかです。少年法は、まさにこれら育成の基本を示す法のもとで誕生したのでした。このことはさらに少年法の成立過程によっても明らかになります。すなわち、現行少年法は、検察官の起訴便宜主義の補充物であった旧少年法が日本国憲法に抵触するところから、これにかわるものとして制定されたものですが、そのさい、司法省草案にも技き難くまつわりついていた強権的、治安主義的性格を削り落して成立したのでした。

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かくて少年法は民主的国民の育成という教育の力によって非行を克服し、もって社会の平和を維持しようとしているのです。
現行少年法のよって立つ非行観は旧法のそれとの比較によって、より鮮明になります。旧法は少年を国家有機体の一部としてとらえ、その非行は処罰や保護によってすべて矯正さるべきものとなります。したがって非行少年はすべて天皇の愛護の精神による教化の対象であり、その手段たる保護処分は少年の利益処分として、刑罰をまぬがれた非行少年に対して、あまねく適用されるべきものとされていました。これに対して現行少年法は、少年を独立した権利主体であり、成長しつつある能動的存在としてとらえ、その非行は成長過程における模索の失敗としてそのほとんどが一過性であることや、少年自身に克服の力が存在することを承認しています。したがって非行少年は教育と福祉による育成の対象であり、一定の権利制限を伴う保護処分は不利益処分の側面をも有するものとして、慎重な適用が求められています。
かかる目的達成のため、少年法は特徴ある基本構造をもつ。第一に、非行克服の大道が教育にあるところから、処遇決定機関は時時の行政府の政治的意向に左右されるものであってはならず、かつ犯罪を契機とする措置として、時に強制力を伴うところから、その設問は憲法上独立を保障された司法(家庭裁判所)とされました。
第二に、非行問題の実体的解決緩和を重視し、捜査、訴追の任にある機関が少年の処遇につき終局決定を行うことを禁じ、処遇決定手続から捜査訴追機関を排し、したがってこれらに異議申立権も認めない。他方、少年、保護者、教師等の手続参加を尊重し、家庭裁判所調査官等の経験科学的調査や教育福祉機関との連携を始めとする教育福祉的措置の活用、尊重を裁判所に義務づけ、裁判所の決定に対する異議申立権を少年側には保障しました。
第三に、法の対象とする少年は、国民の基本的権利行使にかかわる民法、公職選挙法等で未成年とされる二〇歳未満の、犯罪、触法、虞犯行為のあった者とし、保護処分の対象を「非行のある」少年にかぎり、非行を克服しえた少年を除いています。
第四に、処遇内容として、刑事責任年齢である一四歳以下の少年には無条件に児童福祉の措置を優先させ、それ以上の年齢少年にあっても児童福祉の措置にゆだねうることとしました。また保護処分を長期的自由制限を含む措置に限定し、一事不再理の効力等をもって司法処分であることを明確にし、他方家庭裁判所の非公式な各種指導、援助によって保護処分を要しないと確認された一過性非行少年に対して審判不開始、不処分の決定による事件終結を認めました。
その他少年に刑を科す場合の寛刑制、相対的不定期刑制、少年の福祉を害する福祉犯罪の裁判を家庭裁判所の管轄にするなど「特別な措置」を定めています。以上が少年法の基本構造です。

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