学習権と保護処分

保護処分は「非行のある少年」を対象とする、一定の権利制限を件う司法的強制措置であり、刑事政策的には保安処分の一種です。同時に、少年法の目的や教育を受ける権利主体としての少年の法的特質に照らしてみれば、それは教育、福祉的な育成措置としての側面をも有します。
少年法は警察等による一方的継続補導や恣意的な捜査の長期化などを許さず、捜査を達げた全事件をすみやかに家庭裁判所に送致することを命じ、家庭裁判所に対しては、事件につき科学的調査を行い、その結果が処遇決定において尊重されることを求めています。科学的とは少年の能動的存在の事実に立脚することを意味し、少年の発達権を承認するところに成り立つものです。科学的調査はまた少年に対する教育、福祉的働らきかけを土台として行われ、調査過程は同時に問題緩和を目指す教育、福祉的活動の過程でもあります。これら活動の結果なお未解決の問題が残り、家庭、学校、地域等の一般的教育力のみで非行を克服することが困難である場合、保護処分が考慮されます。したがって保護処分は一巡の非行克服方法のなかの特別な方法であり、少年の発達、学習権を制限するものであってはなりません。

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保護観察は思想犯保護観察法に始まる不幸な歴史をもつ社会内処遇ですが、戦後、犯罪者予防更生法のもとで生まれかわり、遵守事項を守って自立した社会生活が営めるように、国家機関たる保護観察所が、指導監督、補導援護を行う近代的社会内処遇となりました。しかし同法一条は「もって社会を保護し、個人及び公共の福祉を増進することを目的とする」と述べ、保護観察が成人、少年の別なく、社会防衛推薦であることを明示しており、少年法の目的との関連に問題を残しています。保護観察を執行するのは保護観察官およびその補助者たる保護司です。
教護院は「不良行為をなし、又はなす虞のある児童を入院させてこれを教護することを目的」としている児童福祉施設であり、感化院、少年教護院をその前身としています。そこでは生活指導、教科教育、職業補導などが行われ、子どもの全生活が展開されることになります。教護院における教育は学校教育に準じたものとされ、教科については文部大臣の勧告に従うことになっていますが、不良性を理由に公教育から排除されたうえでの教育が、教育委員会の委託による教育とみうるか否か、入院に伴う就学猶予措置などとの関係、児童の学籍や卒業認定権者のあり方等、教育法上空白となっている部分が多く、児童の教育権に応える教護のあり方や法制をめぐって、積極的模索が続いています。
養護施設は満一歳以上の保護者のない児童、虐待されている児童等に生活の場を与え養護する児童福祉施設であり、児童は一般家庭児童と同じ保育や教育を受けます。施設生活を積極的に生かした集団主義養護の発展もみられます。
少年院送致は矯正院をその前身とする国立の矯正教育機関であり、初等、中等、特別、医療の四種に分かれます。そこでは「在院者の心身の発達程度を考慮して、明るい環境のもとに、規律ある生活に親しませ、勤勉の精神を養わせるなど、正常な経験を豊富に体得させ、その社会不適応の原因を除去するとともに長所を助成し、心身ともに健全な少年の育成を期して」生活指導、教科教育、職業補導が行われ、高校課程以上では通信制教育の導入なども盛んです。教科について文部大臣の勧告に従い、学校教育に準ずる教育の場とされながら、在院少年の教育法上の地位など、教護院の場合と同様な問題が残されています。
以上保護処分は、教育、福祉、刑事の複雑な側面をもち、教育法学的解明はその緒についたばかりであり、今後の課題に属する分野であるといえます。

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