教育労働と教育法

教育労働者の圧倒的部分は地方公務員です。それは後期中等教育の段階までの学校の大部分が保育所を含めて地方公共団体の設置する、いわゆる公立学校であり、そこで働く教育労働者も地方公共団体の職員として、地方公務員の身分をもたされているからです。もちろんこのほかに大学を中心とする国立学校とそこで働く国家公務員である教育労働者、ならびに私立学校がカバーする高等教育の大きな部分、幼稚園および少数の小、中、高校の私立であるもので働く、民間労働者として取り扱われる教育労働者の二種類があります。
したがって教育法とのかかわりをみる教育労働法としては、地方公務員法、国家公務員法ならびに労働組合法、労働関係調整法、労働基準法などがあって、それぞれに問題がありますが、ここでは主として地方公務員法を念頭において検討することとします。
問題は二つの側面からの分析を必要とします。その一つは教育法の要請する教育の自由ないしは教育権との関連において、教育労働法が教員の自由ないし権利をどのように確保しているかであり、他の一つは教育という職業が専門職であることから要請される、教員の地位の物質的側面での保障が、教育労働法ではどのように確保されているかです。結論を先にいえば公務員法はこの二つの側面ともに不十分にしか確保していません。

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主要な点をあげれば、まず第一に教員の養成および雇用のあらゆる側面で、いかなる差別も許されません。とりわけ性別、宗教、政治的見解、経済的条伴にもとづく一切の差別は許されませんが、公務員法上は、この要請はほぼ充足されているといえます。問題は私立学校の場合であって最高裁三菱樹脂事件判決のいうように、民間企業では雇人にあたって信条等を理由とする差別を合む肩入れの自由があるとする見解が、学校についても妥当するとすれば、保障がないことになります。
第二に、「学問の自由」はどうか。公務員法の規律は「上司の職務上の命令に忠実に従」うことを義務づけています。この自由と義務を調整する法律上の制度は欠けているので、教育基本法六条二項の趣旨等に従った解釈によるほかはありません。私立学校教員についても同様です。また、これとの関連で勤務評定の問題がありますが、法制上の保障が解釈によって主張する以外にはありません。学力テストの実施についても同質の問題が含まれています。
第三に昇給、昇格および懲戒があります。教員の身分が尊重されるためにはこれらすべてについての身分保障が確立されていなければなりませんが、公務員法上の身分保障を除けば、教公特法による大学教員についての保障、地教行法、とりわけ三八条による市町村教委の内申制度による保障などしか法定されていません。私立学校教員には全く法定されていないので、解釈によって構築するほかはありません。
第四に市民的自由については、教公特法二一条の三によって国家公務員なみの厳しい政治活動制限があるほか、間接的には教育中立法の制約が加えられ、一般の地方公務員よりもはなはだしく制限されています。教員の地位勧告とは正反対の状況にあることが知られます。
主要なものをあげれば、まず第一に研修権があります。地公法の規定する一般的な研修のほかに地教行法が特別の研修を規定し、さらに教公特注が規定をおいているので、ある程度保障されているといえますが、なお不十分、ないしは自主研修権をめぐる問題が残されています。
第二に労働時間の問題があります。教育労働が時間的測定が困難であるというところから、労基法の定める時間外労働の取扱いをめぐって紛糾し、時間外勤務を命ずる場合に関する規程が定められました。臨時または緊急やむをえない必要がある場合にかぎり、かつ業務の種類を特定するこの規程は、教員の時間外労働をさせられない権利を保障するものですが、教員が自主的に行わざるをえない時間外教育活動をカバーするために教員給与特別措置法が作られ一〇〇分の四に相当する教職調整給が支給されます。私立学校教員にはこの制度はありません。
第三に教員の多くが女子であることから、とりわけ母性保護の問題があります。いわゆる産休教員法と育児休業法とが制定されています。
第四に、これらの物質的保障を確保するため等の教員の団結活動については、地公法上の職員団体の登録制度が教公特法によって修正されていることのほか、なんらの特別措置もおかれていません。その結果、管理職等を同一の団体に組織できず、交渉に限定されて労働協約を締結できないばかりか、管理運営事項についての交渉も閉ざされ、抗議行動をも罰則づきで禁止されたままです。教員の地位勧告と、もっとも格差の大きい事項です。私立学校教員にはこのような制約はありません。

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