企業内教育と教育法

今日、企業内教育と呼ばれている教育訓練は明治初年から発生、発展してきましたが、最近では教育学の分野でも注目されてきました。例えば、岩波小辞典教育では第二版にはじめて登場し、「企業が、基本的には経営効果をたかめるために、その所属者に対しておこなう教育訓練のこと」と定義されています。要するに、教育訓練の実施主体、目的、被教育者の属性という三つの契機で規定されるのですが、実態に即して考察する必要があります。また、実施主体は必ずしも個別企業というわけではなく、鉄鋼連盟の設立した鉄鋼短期大学は、その学生の大部分が連盟加盟企業の従業員であるところから、企業内教育の一種とされます。被教育者の属性が重視されるのです。

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企業内教育施設が私立学校法に準拠した学校教育一条に掲げる学校、具体的には、高校、高専、短期大学、大学である場合には、企業内教育は独自の目的、教育課程をもつといえども、基本的には教育基本法を中心とする教育法制の規制を受ける公教育の性格をもち、またもたなければならないと解されます。
しかし、生徒、学生が従業員であるときは、公教育としての要請に反しないかぎり、従業員としての教育訓練が併せ課される場合が多い。例えば全日制課程の場合、生徒は、放課後といえども労働時間に相当する時間内の行動につき企業の規制を受けることが多い。
学校教育法一条に掲げる学校ではない企業内教育施設は、基本的には、学校教育法一条に掲げる学校のような公教育の性格をもたないので、企業による任意の教育施設とみなすことができます。ただし、各種学校や専修学校あるいは職業訓練法にもとづく法定職業訓練として実施される場合は、それそれの法の規制を受けるので、企業の恣意性には一定の制約があります。
一九六一年から、技能教育を目的とする企業内教育施設が文部大臣の指定を受けて高校の定時制または通信制課程と連携している場合、当該施設における学習の一部を高校の教科の履修とみなすいわゆる連携教育の制度が発足しました。訓練生の定時制への通学による学習の二重負担軽減が目的であるとされていますが、高校教育を企業内教育に従属させるおそれがある等の反対が強く、また、この連携制度下の生徒の学習の実態をみると、学習上の価値観が高校教育と企業内教育とに分裂しているなどの問題点が指摘されています。
日本の労働契約についてはいわゆる終身雇用制との関係で労働者がその労働力の使用を包括的に使用者に委ねているという理解があり、これが企業の恣意的な企業内教育の実現を可能ならしめてきました。近年ようやく、労働法の分野では、職務に密接な関連のある教育訓練については使用者は受講を命じうる権限があり、また従業員もそれを受ける義務がありますが、思想教育ないし組合問題に関する教育を従業員に強要することは組合への不当な支配介入であるとされるようになったが、さらに、資本の労働者支配は技術教育を通じても貫徹されるので、技術教育についての受講命令といえども、とくに特約がなければ職務内容そのものが、これと直接密接に関連あるものに限定されるべきだという有力な意見が出されています。
他方、労働組合運動の分野において、職業技術教育を受けることは労働者の権利であるとする自覚が強まってきました。このなかで、企業内教育の民主化要求に関連して企業内教育の領域にも教育基本法の諸原則を適用する必要があるとする問題提起がなされましたが、これについては職業訓練の公共化要求の原則に反するという批判かがあり、教育権、労働権研究の課題のひとつとなっています。

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