安全通学の保障

安全通学保障に関する法的諸問題は、道路交通法等にかかわる公安委員会等の指定する交通規制問題、交通安全対策基本法にもとづく交通安全対策、なかんずく、道路交通環境整備および交通安全知識の普及徹底等、学校統廃合、通学区域変更等、学校配置に伴う安全な通学条件の確保に関する問題等があります。本来、通学条件は、整備されるべき教育条件の重要な一環として、「子どもたちの安全で健康的に通学できる権利にかかわる、通学路の安全や距離、通学区割、そして学校配置などであって、こんにちの交通戦争や過疎問題などで、十分なとりくみが要求されている」といえますが、全体として、こんにちの問題状況をみるならば、そのような権利内容にふさわしく、安全通学問題が解決されているとはいいがたいというのが実情です。

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学校教育法施行令二条二項は、市町村教育委員会の通学校指定措置を定めていますが、この通学校指定は、文部省見解によれば、「行政行為の中の命令的処分に属するものであり、この指定は児童の保護者に対し義務を課するもの」と解されています。しかし、同施行令八条では、市町村教育委員会が、相当と認めるときは、保護者の申立により指定変更が可能であることを規定し、同九条では、他市町村への就学についても、当該市町村の教育委員会または、「当該小、中学校における就学を承諾する権限を有する者の承諾を証する書面を添え、その旨をその児童生徒等の住所の存する市町村の教育委員会に届け出」ることによって、示諾の途も法的には開かれています。ここに、安全通学保障の問題に関して、通学区域設定の観点からアプローチしうる教育法的基礎があります。
判例上においても、通学区域変更が回復困難な損害だとして、その処分の執行停止を決定した二つの判例が、安全通学保障の問題を重要な判断基準としている点が注目されます。
一つは名古屋地裁昭和四三年三月三〇日決定で次のように判示している。「本件申請人の児童らがこの小学校に就学を続行することを強く希望していること、川岸地区から神戸小学校までの通学距離は、約二四〇〇米で、中部小学校までの距離の三倍強にあたること、通学路の不備等、通学条件が悪いこと、中部小学校における児童収容能力には支障がないことがいずれも認められます。」
もう一つは、名古屋高裁金沢支部昭和五一年六月一八日決定で、「上記児童らが統合小学校へ就学する場合、通学バスによるとしても、冬期豪雪時の遅刻、不参はさけがたいものであり、或いはバスによる交通事故の危険が予想され、これは一種の教育条件の低下というべく」と判示されています。
このような判例からも、通学区域設定の法的運用にあたっては、通学コースの安全性が第一義的に考慮されねばならないといえます。
以上のような教育法的措置を前提に、道路交通環境整備について、国および自治体が、交通安全対策基本法一二条にもとづく、必要な財政上の措置を講じ、最大限の施策を進めることが、問題を教育的に解決する基礎であり、それに、各種交通規制を効果的に組み合わせることによって、安全通学のための環境整備がまず推進されねばなりません。そうしてこそ、「交通の安全に関する教育の振興」も、「交通安全に関する民間の健全かつ自主的組織活動」も、その効果を期待することができるのである。学校や地域住民は、子どもの権利の第一義的擁護者として、このような安全な通学条件確保のための諸努力をなしなければなりません。

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