PTAによる半強制的な学校寄付集めを止めさせるには

今年、長男が公立の小学校を卒業しました。その時、PTAでは、毎年の慣例だからといって、六年生の父母から児童一人当たり二〇〇円程度の寄付を集め、記念品を学校に寄付しました。私は、ことわりきれない雰囲気なのてこの寄付には応じたものの、なんとなく割りきれない気持です。校務教育にかかる費用は公費でまかなうという精神にも反することだと思いますが、こんな場合にはどうしたらよいでしょうか。

 公立学校に寄付するための募金活動が行きすぎて、強い批判をよび起こした例は、会国各地にみうけられます。
 東京都北区では、昭和四四年に、区内のいくつかの小学校が競うように「新校舎落成」「創立○○周年」などの記念行事をくりひろげ、PTAがそのための寄付金集めに奔走して、大きな社会問題となりました。なかでも創立八〇周年を誇る名門校のA小学校では、学区内の五つの自治会(町内会)会長、歴代PTA会長、同窓会の有志を発起人として八〇周年記念行事の協賛脅かつくられ、PTAは役員、委員を総動員して、在校生の父母はもちろん町内会の会員まで戸別に訪問し、一ロ一〇〇〇円の寄付金を集めました。
 同年一二月二一日付毎日新聞朝刊は、この寄付金集めを批判的に報道しましたが、「父兄の中には、応じなければ子供が肩身の狭い思いをするだろうとしぶしぶ会員となった者もおり、また町ぐるみ募金運動のため、自治会同士が競い合い、勢い強制的な形をとる自治会も出る始末」と指摘しています。
 こうした募金運動の結果、寄付金は目標の一八〇万円を軽く突破し、学校を通じて全児童に写真入りの八〇年史、文集、記念品など、寄付した人には校名入りのフロシキがおくられ、残金は校内設備の改善にあてられました。
 公立学校、とくに小中学校にたいし、そのPTAが行なう寄付については、いろいろな点で問題があります。
 まず、義務教育はもともと公費でおこなわれるのが原則であるのに、学校経費の一部を父母からの拠金でまかなうのは、結局、私費負担の増加をもたらすことになる、という教育政策上の批判があります。残念なことに、義務教育公費負担の原則は、実際には必ずしも完全に貢かねているとは言えない状況にあります。政府の教育予算はきわめて不充分なものであり、そのうえ地方自治体も、その財政力の格差や首長、議会の政治姿勢の相違により、義務教育のための公費負担の程度に大きな違いがあります。

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もう一つの問題点は、公立学校への寄付のための募金運動は、住民にたいする割当強制寄付を禁じた地方財政法に違反する疑いがある、ということです。地方財政法第四条の五は次のように定めています。
 「国は地方公共団体又はその住民に対し、地方公共団体は他の地方公共団体又はその住民に対し、直接であると間接であるとを問わず、寄付金(これに相当する物品等を含む)を割り当てて強制的に徴収(これに相当する行為を含む)するようなことをしてはならない。」
 強制的徴収に相当する行為というのは、客観的にみて強制的とみられるような状況、言いかえれば「ことわりきれない雰囲気」のもとで行なわれる募金行為をさします。したがって、さきに紹介した事例は、いずれもこの規定に違反する疑いが非常に強いと言えます。
 PTAによる寄付集めの行き過ぎに世論の批判が強まってきましたので、多くの教育委員会では、学校寄付のための募金を規制する方向で行政指導を実施するようになっています。
 例えば東京都教育委員会では、昭和四二年三月一三日付で当時の教育長が各区教委教育長宛に「義務教育学校運営費標準の設定と公費で負担すべき経費の私費負担解消について」という通達を出しましたが、そのなかで寄付や記念行事に関して次のように指示しています。
 従来、父兄を主たる会員とするPTA、後援会、その他の団体から、学校後援のための寄附が行なわれてきた。こうした慣習は、おうおうにして、強制にわたる懸念もあり、一方このたびの措置により学校運営費が確保されることになるので、今後はこの種の寄附は受領しない。
 入学式、卒業式及び周年記念式については、標準により公費をもって措置することとしたが、学校における諸行事に伴う謝恩会、祝賀会は、教育の場であることを認識し、慎重に配慮すること。
 さきに述べた例は、このような行政指導にも真向うから違反したもので、関係者とくに区教委、校長の責任は重大です。
 各教育委員会の教育長や公立学校の校長は、地方公務員としての身分を有するものとされています。地方公務員は、その職務を遂行するにあたって、法令、条例、地方公共団体の規則、規定および上司の職務上の命令に従う義務があり、これに違反した者については、戒告、減給、停職または免職の懲戒処分にすることができることになっています。
 地方財政法や行政指導に違反した「学校寄付集め」が行なわれたときには、それに関係した学校長、教育長などを厳重に処分するよう教育委員会に要求し、あるいは、地方公共団体の議会で問題にとりあげるよう、請願や陳情の行動を起こすのが効果的です。

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