父親の言うことはきくが母親の言うことはきかない

 小学校二年生の男の子ですが、私がいくらお使いなどを頼んでも、ちっとも言うことをきこうとしないのに、主人の言うことは、何でもきくようです。私のほうに何か原因があるのでしようか。
 お母さんはお子さんに何を求めているのですか。あなたのお子さんが、お父さんの言うことだけに従っていて、あなたの言いつけをきかないから、あなたは軽く見られているとでも思っているのでしょうか。とすると、これはとんでもない間違いなのです。あなたのお子さんは決してあなたのことを軽く見ているのではなく、よくあなたの気持ちをつかんでいるのです。今きっと、あなたも若く、毎日テキパキと仕事をかたづけていると思うのです。決して、体の動きが不自由で、お子さんに頼らなければやっていけないなどと思っているわけではないでしょう。もしあなたが病気で倒れるようなことでもあったとしたら、お子さんも真剣になって、お手伝いをして、親孝行をすることだと思うのです。また、もう一つ言わせてもらえば、あなたのご主人は、きっとあなたに頼って何でもやってもらうようにしているか、さもなければ、あなたが、ご主人の世話をやくのが大好きで、一生けんめい世話をしているのではないでしょうか。つまり、お子さんは、父母の関係をみながら暮らしているわけです。そして今は、お父さんの立場と同じように自分を考えているわけです。そこから、どうしても、あなたがお子さんの面倒をみるのが当たり前で、自分が父親とは違って、あなたの言いつけをきくことはないと思うようになっていくのです。物事を表面的にみて、自分の考えにとらわれてはいないでしょうか。

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 お母さんの言うことがきけない理由はわかったとしても、依然として疑問が残るのは、それなら何故父親にはむかわずに、父親の言うことだけはきくのでしょうか。考えてみると不合理だと思われてくるのです。それはもう既にお父さんに対してもはむかってきた過去の経験があるのです。これは精神分析の考えですが、誰でも人間は幼児期において、男児は母親に、女児は父親に愛情を抱くのです。
 今愛情という言葉をつかいましたが、実は、もう少し強い性的な情動を抱くとでも言うべきでしょう。このことをエディプスコンプレックス(男児から母親へ)、エレクトラコンプレックス(女児から父親へ)と呼んでいます。しかし、幼い恋はやがて破れる運命にあるわけで、男児がいくら母親を慕っても、父親という強大なライバルがいたのでは、たまらないわけで、無残にも、その恋は成就せず、エディプスコンプレックスを抑圧しなければならないのです。これは、ちょうど小学生の時期にあたり、あなたのお子さんの年ごろでは、もうお父さんに対するジェラシーもすっかり影をひそめてしまい、むしろ逆にお父さんのようになりたいという同一化が生じてきていると思うのです。したがって、表面からみても、お父さんを尊敬しているという状態がはっきり見えていますし、お父さんの言うことなら何でもきくようになっているのです。
 いくらお子さんが、あなたの言うことをきかないからと言って、決して失望することは無いと思います。お子さんは、ご主人と同様、あなたなしでは暮らしていけないのです。あなたは家庭の中で中心にいて、何でも思うように動かすことの出来る実力をもっているのです。ただご自分でそのことに気づいていないので困るのです。母親という存在は、男児であろうと女児であろうと、コンプレックスを超えて、まさに直接養育をする、されるという深い関係をもっている仲なのです。
 例えば、女児が父親を幕っているとしても、直接毎日接触し、世話を受けている母親をライバルとして敵視することが出未ると思いますか。潜在的な心理としては考えられましょうが、人間関係は、さほど単純ではないのです。女児ですらそうですから、まして男児があなたに頭が上がるはずはないのです。しからば、むしかえすようですが、何故あなたの言うことをきけないのかというと、先述したように、わがままな態度で、「自分を父親に近づけて扱って欲しい」という甘えの行動を見せているのです。極端な言い方をすると、お母さんを困らせて、自分の権力を自認するという幼稚な行動であり、実に気やすく、傍若無人な態度なのです。そして、このような傾向は、欧米諸国には少なく、日本人の母子関係にはっきりと認められるようです。日本の親子関係というタテ型の強い社会の特徴でもあるのです。それに従順な母親の存在も関係していると思います。
 まあ、あまりこだわらないことです。お子さんの気持ちをためそうなどと思わず、あなたがお子さんをあてにしないでいることです。
 そして、もっと根本の問題であるご主人との間で、少しずつお子さんの前でお母さんの言うことが大事にされ、お母さんの言いつけをきくお父さんの姿をよく見せることを考えてみたらどうでしょうか。そのためには、お父さんによく話して協力してもらうことです。そしてお子さんには、何故お手伝いしてもらいたいかということを次のような点を強調して説明することを考えてみましょう。
 (1) お子さんが役に立つようになったこと。
 (2) 家中で力を出しあい、助けあって暮らすこと。
 (3) 忙しいお母さんの生活の中で、お子さんの手伝いがいかに必要であるか。
 そして、このような話は、しかったり、愚痴っぽく話したりと言うような、マイナスの感情のもとで話してはいけません。母子双方がゆったりしている時に話すことを心がけることです。
 そして、これはちょっとしたことですが、手伝いを頼む時は、出来るだけはやめに心の準備をつくるように心がけることも忘れないようにしましょう。くい違いは、ちょっとした思いやりを失う時におきやすいものです。

父親と母親の意見と態度の食い違い/ 父親の言うことはきくが母親の言うことはきかない/ 親の顔色をうかがう/ 親の言う事を聞かない/ 親を批判する/ 親と話をしたがらない/ 親を脅す子/ 注意するとすぐふくれる子/ 自分の物に人がさわると嫌がるときの扱い/ 口答えする/ 反抗期の子ども/ 兄弟への公平な接し方/ 兄弟げんか/ 弟や妹をいじめる/ 異性のきょうだいのいない子/ お下がりと子どもの不満/ やきもち/ 一人っ子/ 末っ子/ 中間の子/ 長男・長女/ 祖父母と子ども/ 家族としての意識の薄い子/ 子供部屋と家族のふれあい/ 難しい中学生との接し方/ 大学進学問題で親子の意見が対立したとき/ 義理の親子関係/ 離婚したときの子どもの扱い/

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