自分の物に人がさわると嫌がるときの扱い

 六歳の女の子ですが、貝がらや石ころなどを集めては小箱に入れ、自分だけの秘密として大切にしまいこんでいます。また、自分のものに人がさわるのをとても嫌がるようになりました。こんな時期の子には、どんな接し方をしたらよいのでしようか。
 自分のものを大切にするとか、自分の秘密とか宝物をもつとか、他人が自分のものにさわることを嫌がるといった類いのことは、いずれも心理的に自分という存在がはっきりしてきたことを物語っているのです。人間の発達において、最初のうちは自分も他人も区別のない状態であったのですが、やがて、自分と他人とが違うということがわかってくるのです。一番早い時期は、他人に対立するということから自分の存在がはっきりしてくるわけで、このような対立が、親に対する反抗という形で現れてくるわけです。時期としては満二歳ぐらいから四歳ごろにかけてであり、第一反抗期と名づけているわけです。このような反抗が現れてくるのは、最初のうちに自分に対して許容的かつ奉仕的であった親が、少しずつ躾という形の要求や抑制を出してくるからです。親が子どもの発達をみながら、要求とか抑制を行ってくるということは、いわば当然のことというべきでしょう。ただ子どもにとっては、自分の期待とか要求が抑えられるという新しい経験ですから、あまり快くないわけです。そこから怒りっぽくなったり、親に対する素直さが失われていったりすることになるわけです。
 考えてみますと、人間の心理の中で自分という存在は、他人からつき放されて、苦労することからわかってくるものだと考えられましょう。

スポンサーリンク

 親に対して反抗してみたとしても、いつまでもその拒否的な態度はよい結果をみるわけではありませんから、いわば無益の反抗ということがわかってくるわけです。無益な反抗は続かず、そこからまた新しい親への依存が生まれてくることになるわけです。考えてみるとこの親への反抗と依存は、親子関係に順次転換しながら現れてくるものなのです。そして、発達段階を進むにつれて、少しずつ高次の水準の自立が生まれてくることになるわけです。
 反抗するということ自体、自分の力に自信がついてきた証拠なのですが、反面反抗しきれない弱さも必ずあるわけで、それが依存となって現れてくることになるわけです。本問のお子さんは、この幼児期の反抗から脱してきています。しかし自分だけの世界を求め、そこに往みはじめたとも考えられましょう。あなたが気にしておられる他人がさわることを嫌がるようになってきたというのは、たしかに気になることです。でもこれも逆に考えてみれば、安易に母親に依存するという形で反抗を終えてはいないわけで、自分の世界を求めて、そこに住みはじめたということは、自分の存在がはっきりしてきたということですし、またいつも他人の傍にくっついていなくとも、一人で遊んだり、工夫したりする自立心が芽生えてきたとも考えられるわけです。この自立心を抑えないようにまず注意してください。
 本問の中に全く現れていないことで、おききしたいことは、このお子さんの友だち関係がどのようになっているかということです。おそらく、とくに変わったところはなく、よく遊んでいると思うのですが、どんなものでしょうか。つまり発達していく過程で、この幼児期は、親からの自立が行われるとともに、友だち関係では、友だちも増えてきますし、友だち遊びも活発になってくるのです。友だちづきあいの中で、少しずつ自分の秘密の世界をみせあったり、時には友だち仲間で秘密の世界を共有するということなども起きてくるわけです。そして大人の世界からはなれた子ども集団の活動が行われるようになって、小学校のギャング時代がはじまってくるわけです。ですから友だち関係では、三歳児ころにみられた独占欲の溢れる時代とは異なって、このころは友だちに対しては比較的許容的だと思うのです。ただここで言っている「自分のものに人がさわる」という言葉の人は、親とか、兄弟ではないでしょうか。とすれば、これは極めて正常で、身近な親しい人から一線を画すところに自立の一歩がふみ出せるからなのです。
 もちろん、だからと言って放っておくのではなく、お子さんとあなたとの親子関係も開発するために気をつけていかれることが望ましいわけで、そのためには、まずお子さんの世界を尊重することから、新しい関係がはじまっていくわけです。
 この頃の子どもは、ささいなことでも、自分への干渉に敏感になっているものです。よく親の中には、こういうわが子の態度が気に入らないからと言って、かえってむきになってわが子への干渉をはじめることがありますが、そうすればするほどわが子は親からはなれていくことになってしまうのです。こんな簡単な親子関係の気持ちの動きに極めて鈍感な親がいるとは驚くべきことです。
 前述したように、子どもの自立がはじまっていて、それが多少行きすぎと感じられるようなことであっても、まず子どもの気持ちの安定を積極的にはかることを考えて欲しいのです。子どもは、自分の存在が無視されず、脅かされることさえなければ、別に親から離れる必要はないわけです。いや、それどころか、子どもはいつまでも親の傍にくっついていたいわけですし、その必要性もあるわけです。とかく親は、相手が幼児であっても、目前の不快な出来事に対して我慢ならないということが多いようです。子どもを育てる側の親の方から、子どもの気持ちをわかってあげるような努力をすすめていくことが大切なのです。
 あなたのお子さんに、昔あなたが大切にしていた子どものころの思い出とか、楽しい遊びなどを話しをしてみることとか、ひたすら子どもの世界に浸っているお子さんへの共感を探してみることこそ、最もよい働きかけになるのです。

父親と母親の意見と態度の食い違い/ 父親の言うことはきくが母親の言うことはきかない/ 親の顔色をうかがう/ 親の言う事を聞かない/ 親を批判する/ 親と話をしたがらない/ 親を脅す子/ 注意するとすぐふくれる子/ 自分の物に人がさわると嫌がるときの扱い/ 口答えする/ 反抗期の子ども/ 兄弟への公平な接し方/ 兄弟げんか/ 弟や妹をいじめる/ 異性のきょうだいのいない子/ お下がりと子どもの不満/ やきもち/ 一人っ子/ 末っ子/ 中間の子/ 長男・長女/ 祖父母と子ども/ 家族としての意識の薄い子/ 子供部屋と家族のふれあい/ 難しい中学生との接し方/ 大学進学問題で親子の意見が対立したとき/ 義理の親子関係/ 離婚したときの子どもの扱い/

       copyrght(c).子育てと育児.all rights reserved

スポンサーリンク