兄弟への公平な接し方

 六歳と四歳の男の子がいますが、上の子は、「弟にばかりおもちゃを買って、僕にはちっとも買ってくれない」といってよくひがみます。私は子どもたちに公平に接しているっもりなのですが、子どもから、こういわれると戸惑ってしまいます。二人にどのように接していったらよいのでしょうか。
 親は子どもをかわいがるのは当たり前、子どもが何人いようとかわいさには変わりがない、と大多数の親は疑いもなく信じています。そして子どもたちも当然、親の愛情を同じように受けとめているものと思い込んでしまいます。そこに、弟ばかりというような恨みがましい言葉を聞くと、びっくりしたり心外な感じを持たれると思うのです。
 では、本当に親の愛情は子どもに対してわけへだてのないものなのでしょうか。確かに抽象的に考えれば、わけへだてはないかもしれません。しかし、愛情というものも、親の具体的な行為を通して子どもに伝わることを考えると、複数の子どもたちに、全く同じように接していると言い切れる親は少ないのではないでしょうか。「弟にばかり買ってあげて」という抗議をうけるからには、具体的事実として、その時は弟に買ってあげてお兄ちゃんには買わなかったのでしょう。親の立場としては、それなりの理由があることでしょうが、子どもは、それぞれの立場から事態を全く別の目で見て感じているということが多いのです。

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 お母さんは同じように育てたと思っていらしても、兄弟が全く同じに育てられるということはあり得ないのです。それは親の愛情の差ではなく、家族の中での立場、つまり環境の差が確実に存在するからです。
 上のお子さんの立場を考えてみましょう。お兄ちゃんは当然、ご両親の間の第一手として生まれてきた訳です。はじめての子どもということで、ご両親は大きな喜びを味われたでしょうが、同時に慣れない育児に緊張や不安も感じられたことでしょう。二人だけの生活が三人になり家庭の雰囲気もぐんと変わります。赤ちゃんの成長の節々がご両親にとっては新鮮な体験です。一方、お子さんは生まれた時から一家の注目の的であり、最大の関心事です。玩具もお菓子もすべて自分の物であり、お母さんも自分だけのお母さんです。おばあちゃんやお客様もまず自分に笑いかけます。お子さんは、このようなことを当然と感じて二歳まで育つわけです。そこに突如弟というライバルが現れます。自分に集中していた関心が新しい赤ちゃんに移り、自分だけのものだったお母さんの膝には弟が抱かれています。大事にされている赤ちゃんに比べて、自分は待たされたり、「自分でしなさい」と注文をつけられたり、心寂しさを感じ、世の中が疑わしくなってくるかもしれません。一番上の子どもは多かれ少なかれ、このような気持ちを味わっているのです。
 お兄ちゃんに比べて弟は、生まれた時からお母さんはお兄ちゃんと分かち合うべき存在であり、常にお兄ちゃんを念頭において暮らすようになることでしょう。大人の中の一人ではなく、遊び相手も身近かにいます。お母さんも二人目の子どもということで、お兄ちゃんに対するような新鮮さはない代わりに、安定して落ち着いて育てることが出来ます。しかし、少し大きくなると、常に自分より一歩進ん だ存在、自分より力があり、上手でかなわない存在に対して競争心が出てきて背伸びしながら暮らしたり、お兄ちゃんを横目で見ながら、上手に生きていくすべを覚えたりします。
 また、別の家庭では、上の子どもの時は、まだ子どもを育てる準備が整わず、仕事や夫婦だけの生活に未練が残っていたが、二番目の子どもは一応家庭も落ち着き、ゆとりをもってかわいがられて育ったということもあるでしょう。このような子どもが生活していく背景が違うことにより、親の一言でも受け取り方が異なってくるということは多いのです。
 親の意識のうえでは、わけへだてないつもりでも、子どもの立場からみると、前述した例のように、二人の子どもの心理的背景は随分異なるのです。それに加えて、よく自分をふり返ってみると、それぞれの子どもに対する自分の気持ちはやはり違うとおっしやるお母さんも多いのです。デパートの子ども服売り場に行くと、つい上の子に似介っものばかり選んでしまうとか、下の子は心おきなくしかれるけれど、上の子はどうも気を使ってしまうということを聞かせてくださったお母さんがありました。何でもないことのようでも、子どもからみれば、親が思う以上に敏感に「態度の違い」として受け取られ、それが「愛情の違い」と誤解されることも多いのです。つまり、どの子どもも自分を一番大事にかわいがってほしいと願っていて、それを否定せざるを得ないような親の態度に嫉妬深い恋人のように反応していることが多いのです。
 親の愛情をめぐって、こんな熾烈な競争意識を秘めている子どもたちに対して、どうやったら公平に接することができるでしょうか。ここで考えたいのは、公平というのは、親の意識の問題だけでなく、子どもがどう感じるかということが大事だということです。子どもが不公平だと思うのは、他の兄弟と比べて客観的に言っているのではなく、自分がないがしろにされたり、後まわしにされたり、わかってもらえないと感じるからで、要するに兄弟関係の問題というより、個々の親子関係の問題なのです。一人一人の子どもにとって、自分はたった一人のかけがえのないお母さんなのだということを、はっきり意識してください。そして表面的に公平さを保とうとしたりするより、「子どもたち」と考えずに、別々の人間を相手にしているのだと考えて、一人一人の訴えに耳を傾け、話相手になり、支えていってあげることによって、子どもが「自分はお母さんにかわいがられている」という確信がもてれば、不満に思うことはずい分減ると思います。現実問題として、上の子どもだけに買ってあげたり、下の子どもだけをどこかに連れていったりということは、いくらでも起きることでしょう。そういう時、きちんと事情を説明してあげればきっとわかってもらえます。大事なのは、不満が出てきた時、その訴えにきちんと耳を傾けて、お母さんの気持ちや事情もよく話してあげることだと思います。まともに自分に対してくれた親によって満たされて、目先きの不満は消えます。逆に「そんなことありません」「うるさいわね」と突き放されると、そこで不満が定着してしまうのです。

父親と母親の意見と態度の食い違い/ 父親の言うことはきくが母親の言うことはきかない/ 親の顔色をうかがう/ 親の言う事を聞かない/ 親を批判する/ 親と話をしたがらない/ 親を脅す子/ 注意するとすぐふくれる子/ 自分の物に人がさわると嫌がるときの扱い/ 口答えする/ 反抗期の子ども/ 兄弟への公平な接し方/ 兄弟げんか/ 弟や妹をいじめる/ 異性のきょうだいのいない子/ お下がりと子どもの不満/ やきもち/ 一人っ子/ 末っ子/ 中間の子/ 長男・長女/ 祖父母と子ども/ 家族としての意識の薄い子/ 子供部屋と家族のふれあい/ 難しい中学生との接し方/ 大学進学問題で親子の意見が対立したとき/ 義理の親子関係/ 離婚したときの子どもの扱い/

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