やきもち

 四歳になる女の子です。私が、下の子の世話に忙しくて、なかなかかまってあげられないせいか、下の子に、やきもちをやくようになりました。近ごろでは、やきもちやきもひどく、遊び相手にと買ってあげた人形までも投げつけてくる始末です。このままでは、どんどんエスカレートしそうで心配です。どうすれば直るのでしようか。
 子どもにとってお母さんはかけがえのない存在です。どの子どもも、自分がお母さんにとって一番大事な子どもなのだ、と思いたいのです。きょうだい皆 のお母さんだということはわかっていて、もちろんそれが当然だと知りながら、やはり心のどこかで、自分だけのお母さんでいてほしいと思っているのです。
 まして、一番はじめに生まれた子どもは、現実に、お母さんを自分だけのものとして育ってきました。誰かとお母さんを分かち合うなどと考えたこともなかったのに、病院から帰ったお母さんは大事そうに赤ちゃんを抱いています。一体何か起こったのか、きっとわからなかったことでしょう。赤ちゃんが生まれるということは知ってい て、きっと楽しいことだろうと予想はしていても、現実にどういう変化が起こるのかは幼い子どもには予測もつかないことでしょう。ある三歳の男の子は、お母さんに「いつ赤ちゃんは帰るの。早く病院に連れて行こうよ」と頼んだそうです。赤ちゃんが来る前の心おだやかな日々を早く取り戻したいと思っていたのでしょう。赤ちゃんは一向に帰る気配もなく、お母さんは何かというと赤ちゃんを抱きあげます。上の子どもは、家庭の中で自分の存在が二の次になったと感じ不安をつのらせます。大事なお母さんが赤ちゃんに取られてしまったようでいたたまれないのです。

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 やきもちをやくのは、お母さんが自分の相手をしてくれることが滅ったことに対する不満というような単純なものではないのです。生きていく時、自分が依って立っていた地盤が崩されていくような大変な不安感を持つ場合すらあります。何とか以前の日々を取り戻そうとする必死な努力が、上のお子さんの生活態度をがらっと変えてしまいます。多くの場合、下に子どもが生まれるのは、上の子どもがそろそろ自立へ向かって歩き始める時期と重なります。「一人でやってごらん」「もう大きいんでしょ、がんばってごらん」「がまんするのよ」お母さんの子どもに対する姿勢が無条件に手を貸していたころと違って、一歩離れたものになってきます。赤ちゃんさえ生まれなければ、このような親の期待は、子どもにとって自分は大きくなったのだという誇りを感じさせるものでしょう。一人で出来た、がんばれた、ということは子どもにとっても満足がいくものでしょう。しかし、このように新しい事態に直面していくには、親子関係が安定し、子どもに心理的なゆとりがないと出来ません。赤ちゃんが生まれるということは、お母さんを取られるのではないかという、基本的な不安を生み、その上に自立させようという親の気持ちや態度が、この不安を確実なものにし、拍車をかけることになってしまいます。
 赤ちゃんのまねをすることで、お母さんの関心を呼び戻そうとする子どもは、急に赤ちゃん言葉を使い出したり、出来ることも「やってちょうだい」とせがむようになったりします。哺乳ビンで牛乳を飲む、おむつをしてもらいたがる、ということもよくあります。赤ちゃんさえいなかったらと思う子どもは、赤ちゃんをけとばしたり、顔の上にざぶとんをのせようとしたり、お母さんが抱くとひどくおこったりします。赤ちゃんばかり世話をしているお母さんに対して腹を立てた子どもは、お母さんの言うことを聞かなくなり、乱暴をしたり、困らせることばかりします。
 このようなことはすべて、「お母さん、前のように私だけをかわいがってちょうだい」という子どもの切ない気持ちの必死の訴えなのです。
 何事によらず、子どもの困った行動は、子どもの立場からみると、大人に対する切実な訴えの表現です。困るからといって、その行動をやめさせようとすることは、多くの場合、この子どもの訴えを無下に退ける結果になるのです。子どもはますます不安を感じ、更に強く訴えるために、親から見ると困った行動がどんどんエスカレートするように見えるのです。
 叱る前に、親を困らせることで何を訴えようとしているかをわかってあげてください。
 赤ちゃんにお母さんを取られそうだ、お母さんは変わってしまったのだ、という幼い心配をまず取り除いてあげるよう努力してあげて欲しいのです。赤ちゃんが生まれても、あなたはお母さんの大事な子どもですよ、ということを何とかして伝えてあげてください。自立に向けての躾はひとまずおいて、なるべく要求に応じて世話をしてあげましょう。寝る時ついていてあげたり、お話をよく聞いてあげたり、優しくしてあげましょう。時には赤ちゃんをお父さんにあずけて、お姉ちゃんと二人でお出かけしてみるのも良いでしょう。お母さんは、赤ちゃんの世話だけでも大変なのに、上の子まで手がかかるなんて、とため息が出るかもしれませんが、上の子どもにとっては将来の性格が決まってしまうほどの危機的場面です。お母さんの努力で「やはりお母さんは前のように優しいお母さんだ」「お母さんは私を大事に思っていてくれる」という安心感が子どもの中に生まれたら、もう大丈夫です。邪魔にしていた赤ちゃんに対しても好奇心が出てきたり、お姉さんらしくふるまってみたりするゆとりができてきます。「赤ちゃんを世話するのは大度なのよ。あなたがいるからお母さんはとても助かるのよ」こんな気持ちでお姉ちゃんに接していけば、きっと励みになって、赤ちゃんを育てるパートナーとしての自分の役割に満足感を覚えるようになるでしょう。ここで改めて「私はもう大きいんだから、こんなことも出来るんだ」という気持ちが持てるようになってくると思います。お母さんと赤ちゃん対上の子ども、という形でなく、上の子どもとお母さん対赤ちゃんという形がつくれると、やきもちも大分おさまってくるはずです。

父親と母親の意見と態度の食い違い/ 父親の言うことはきくが母親の言うことはきかない/ 親の顔色をうかがう/ 親の言う事を聞かない/ 親を批判する/ 親と話をしたがらない/ 親を脅す子/ 注意するとすぐふくれる子/ 自分の物に人がさわると嫌がるときの扱い/ 口答えする/ 反抗期の子ども/ 兄弟への公平な接し方/ 兄弟げんか/ 弟や妹をいじめる/ 異性のきょうだいのいない子/ お下がりと子どもの不満/ やきもち/ 一人っ子/ 末っ子/ 中間の子/ 長男・長女/ 祖父母と子ども/ 家族としての意識の薄い子/ 子供部屋と家族のふれあい/ 難しい中学生との接し方/ 大学進学問題で親子の意見が対立したとき/ 義理の親子関係/ 離婚したときの子どもの扱い/

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