一人っ子

 四歳の女の子です。一人っ子なので甘やかしたせいか、わがままで、自分の思いどおりにならないと大声で怒ったり、すねたりします。とくに最近では、私にとても反抗的です。また、友だちを無性に欲しがり、友だちが遊びにくると絶対に帰そうとしません。こんなことでは心配ですが、どうすれば直るでしようか。
 生き生きとかわいらしくご自慢のお子さんが、手がかからなくなったと思った途端に、言うことをきかなくなり、叱っても励ましても一筋縄ではいかず、あまつさえ親に向かって反抗してくる子どもに、ほとほと手を焼き、嘆息をつきながら、不安な思いにかられていらっしやる、というようなお母さんの姿が目に浮びます。でも、お子さんの状態は、四歳の一人っ子として考えると、成程とうなずける面があり、お母さんは大変でしょうが、お子さんの発達から見て決して困った状態とは言えないように思うのです。むしろ、順調に発達しているあかしのようにも思えます。

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 子どもは発達してくる過程で様々な姿をみせて来ます。子どもが大きくなるということは、波風立たずに、自然に変化してくるものではなく、何も出来なかった赤ちゃん時代から、身体の機能が整い、生活領域が拡大し、周囲からの期待が増してくる中で、子どもは不安な思いをしたり、大人によって慰められたり、不思議なことや驚くべき出来事に出会ったり、新しい楽しさを発見したり、要するに周囲の出来事に常に反応しながら生活しています。そして、自分自身が急激に変化する時期ですから、同じ事柄に対する反応の仕方もその時々で変わるのです。つまり、子どもというものは、大人が考えるよりはるかに複雑な生活を送っている訳です。
 大まかに言うと三歳児は、一応の身体的機能が整い、大人の移動について動けたり、大人と会話をかわしたり、親にたよっていた事が少しずつ自分で出来るようになって、成長の一段落が認められます。そしてこの時期は、大人に対して協調的な時期で、ほめられると喜び、教えられると素直に従い、大人の期待にそうことが子どもの満足にもつながる時期で、親からみると、やれやれと一息ついて、子どもと楽しく過ごせるおだやかな時期なのです。ところが、それに続く四歳児は、三歳と打って変わり、自己主張が強くなり、自分の考えを変えず、大人に対して批判的でまことに扱いにくい時期なのです。
 大人の言いなりになることではあき足らず、自分というものに固執するようになります。客観的に理解することが少し出来るようになるので、人と自分を比べたり、ルール違反にすぐ気付いたりします。まだ相手の事情を受け入れるゆとりはありませんから、相手に対して厳しい態度をとるようになり、それは真先に親に向けられます。「新聞とってちょうだい」と頼めば「自分のことは自分でしなさい」という返事が返ってきたりします。いそいそと持ってきてほめられて喜んでいた三歳のころとは大ちがいです。当然、周囲と衝突することも多くなり、そういう時、上手に自分を相手に伝えることが出来ないので、かんしゃくを起こしたり、すねたりします。あんな良い子がどうしてこんな悪い子になったのだろうかと悲しくなることもあるかと思います。
 このように周囲とぶつかり、自分も大変な思いをしながら、四歳児は多くのことを学んでいきます。自分の力を試したり、物事の筋を理解したり、いろいろな人間がいて、それぞれの立場が違っていることがわかったり、必ずしも決められたとおりに物事は動かなかったり、というようなことを身をもって体験していきます。小さな安定した世界からより大きなより複雑な世界を知り、そこに適応していくために四苦八苦しているのです。このことは、子どもが大人になっていく過程でとても大事なことです。客観的理解、責任をもつということ、状況を把握すること、自分の言動の影響を知ることなど、大きくなって必要になる様々な力を育てる最初の時期なのです。中でも一番大事なのは、人と人との関係を知ることです。自分を主張すること、相手にも立場があること、妥協すること、などを知るには大事な時です。
 こう考えると、友だちをむしょうに欲しがったり、親に反抗したりするということは、このお子さんが必要なことを学ぶ土台が出来ていることを示すものだと思えるのです。親に反抗できるということは、親の愛情を確信しているからであり、友だちを欲しがるということは、安定した小さな世界から出て行きたがっているからです。
 今まで述べたような大事な四歳児の時代を過ごす時、一人っ子にはどのようなことを気をつけたらよいでしょうか。一人っ子は、利点も沢山ありますが不利な点もあります。最大の利点は、親の愛情が十分注がれること、他の子どもとのかね合いを考えずに、親として出来る十分なことがしてあげられることでしょう。遊んであげようと思っても赤ちゃんに手がかかる、ということはないわけです。逆に、そういうことが、外の社会で絶対的に必要とされる、我慢することや、人と分かち合うこと、相手の事情を理解することなどで、家庭内で手ほどきをうける機会に恵まれないということにもなります。又、二人の親に一人で立ち向かっていかなければならないことも、一人っ子を気弱にさせる一因だとも思えます。
 今の状態を子どもの発達の一つの過程と捉え、それを乗り越えさせるために、一人っ子としての条件を理解した上で、適切な援助をしていってあげてほしいと思います。兄弟がないことを補うにはお友達がどうしても必要です。個々の子どもに目を届かせてもらえる幼稚園に入園さ せることが良いでしょう。子どもに引きずられず、子どもを抑えつけない接し方や、子ども一般についての理解を深め、お母さんの心配を少なくするためにも、良い子育ての仲間が出来ればよいのではないでしょうか。

父親と母親の意見と態度の食い違い/ 父親の言うことはきくが母親の言うことはきかない/ 親の顔色をうかがう/ 親の言う事を聞かない/ 親を批判する/ 親と話をしたがらない/ 親を脅す子/ 注意するとすぐふくれる子/ 自分の物に人がさわると嫌がるときの扱い/ 口答えする/ 反抗期の子ども/ 兄弟への公平な接し方/ 兄弟げんか/ 弟や妹をいじめる/ 異性のきょうだいのいない子/ お下がりと子どもの不満/ やきもち/ 一人っ子/ 末っ子/ 中間の子/ 長男・長女/ 祖父母と子ども/ 家族としての意識の薄い子/ 子供部屋と家族のふれあい/ 難しい中学生との接し方/ 大学進学問題で親子の意見が対立したとき/ 義理の親子関係/ 離婚したときの子どもの扱い/

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