家庭での学習と親の役割

 最近は、箸の持ち方、ひもの結び方、鉛筆の持ち方とけずり方などの指導を学校で行い、家庭に帰ってからのお子さんは、学校の延長の教科の学習の予習やら復習やらにあけくれしているといった奇妙な現象が、あたかもそれがあたりまえのように、よくみられます。おそらく、進学競争の中で、少しでも多くの知識をつめ込まなければ、その流れに乗れないといった危機感が、知識中心の学習にお子さんたちを追い込んできたのでしょう。そして、気がついてみると、いっこうに乳離れしない子や、善悪の区別さえもつかない子を育てていたという笑えない事実がみえてきたのです。
 箸の持ち方、ひもの結び方は、本来、家庭の生活の中で、時間をかけて序々に身につけていくべきことであり、また、教科の学習は、本来、学校で専門の知識と技術をもった先生の指導のもとですすめていくべきことなのです。ですから、ここでは、学校をそのまま持ち込んできたのとは違った、家庭だからこそできる学習や、お母さん、お父さんの役割について考えてみたいと思います。

スポンサーリンク

 お子さんの個性を伸ばす、適性を引き出すということになると、すぐに、ピアノ、絵、水泳などの。おけいこに結びつけがちですが、決してこのようなものだけでなく、もっと身近で、日常的なことの中に、それを目指した学習活動があるように思います。お子さん自身が興味や関心をもったことを、自由に深め、広げていく活動がそれです。
 例えば、魚や水の中で生活する生物に興味をもったA君がいます。A君は、家でいくつもの水槽に、熱帯魚、かめ、貝など数種類を飼育しています。どれも、それぞれ飼い方が違うものです。そして、A君は、飼育の仕方の本はもちろんのこと、何種類もの図鑑を手もとにおいて、疑問に思ったことや興味や関心をもったことを調べ、具体的な観察や体験を土台にして知識をふくらませています。A君はやがて動物園附属の水族館にも通うようになり、さらに深く自分の世界を広げています。
 このように、時間に制約されず、自由に、心ゆくまで、さまざまな試みで取りくめることが、家庭ならではの学習なのです。これは学校の明日の学習に直接すぐに結びつくものではありません。まして、テストの成績にすぐひびくようなものでもありません。しかし、ここでのお子さんは、生き物を育てる楽しさ、難しさ、発見の喜び、さらには、継続する力、責任感といったものまで知り、身につけていくにちがいありません。
 ここでは、お父さんやお母さんは、お子さんにさまざまな経験を積める機会を与え、その経験を通してお子さんが試行錯誤をくりかえしながら個性的に育っていく姿をじっくり見守ることです。
 お母さんは、お子さんとの接触時間が長いので、ついこまごまと口うるさくなりがちです。一年生の入学当初などは、つい、学校でしっかりやってもらいたい、立派な一年生であってもらいたいという気持ちが先に立って、つかれて帰ってきたお子さんに「ただいま」の声も消えぬ間に「今日、学校でどんなことをやったの、話してごらんなさい」「先生の質問にしっかり答えられたの」と、矢つぎ早に問いかけます。これでは、お子さんをふるい立たせるつもりが、逆に、意欲をそぐ結果になってしまいます。
 お母さんの持ち昧は、大地のように広く、大きく、ゆったりと動かぬところにあるのです。学校で大勢の集団の中に入って緊張しきって家に帰ってきたお子さんには、まず、ほっとしたやすらぎ、安心感を与えることが何より大切です。お子さんの情緒の安定が、実は、あらゆる学習の効果につながるのです。
 ですから、お母さんは、自分のその日の気分で、同じようなことについて、叱ったり、褒めたりというような、価値感がゆらいでいる態度をとることは、最もいましめなければなりません。そして、指示、命令はできるだけひかえて、よき聞き役、受けとめ役になることが望ましいのです。
 お父さんは、お子さんとの接触時間は一般的にみて短いのですが、必要な出番には、きちんとお子さんと向き合ってその役割を果たすことが大切です。
 お父さんは、お母さんに比較して、大きな組織や社会とのかかわりが濃い場合が多く、その多彩な経験と広い視野から、ものごとを考えたり、判断したりする力をもっているといわれています。このお父さんの特性を生かして、お子さんの成長を見守り、手を貸して欲しいのです。
 ところが、最近は、お子さんの単なる遊び相手になったり、買い物や旅行に連れていくだけの触れ合いに満足したり、または、こまかな生活上の躾や、学習成績にも一つ一つお母さんと一緒になって口出しをしたりするお父さんが目に見えて多くなってきたように思います。お父さんには、もっと、父親ならではの持ち味を発揮して欲しいのです。
 ですから、お父さんの場合は、お子さんとの接触時間をふやすことに心がけるよりは、むしろ、触れ合いの質を考えられることが大切に思えます。お父さん自身の生きざまをお子さんに見せる、お父さん自身の信念と生き方をお子さんに示すことが、何よりもお子さんに希望と意欲を与えることになるのではないでしょうか。

家庭での学習と親の役割/ 家庭での勉強時間/ 勉強部屋のあり方/ 家庭教師をつけるか、つけないか/ 学習塾/ 学用品の与え方/ 休み中のすごし方/ ドリル・ワークブック/ テレビばかり見る子/ 勉強嫌い/ クラブに夢中で勉強しない子/ ながら/ 共働き家庭の子の学習/ 図書館の利用の仕方/ 社会勉強/ 社会見学/ 奉仕活動/ 子供会/

       copyrght(c).子育てと育児.all rights reserved

スポンサーリンク