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 中学校一年生の子どもですが、勉強する時必ずラジオをかけています。たしなめると「友だちはみんな聴いてる」と言いますし、聴かないと友だち間での話題についていけないらしいのです。今のところ黙認しておりますが、これが癖になって集中して勉強することができなくなるのではないか心配です。
 最近のお子さんは、「ラジオを聴きながらでも、問題は解ける」「何か音が流れていた方が、問題がよく解ける」などといいます。勉強は静かなところで集中してやることが能率があがることといわれ、実行してきた大人には、とても理解できないことです。
 しかし、わたしたちの家庭生活の中でも、だれも真剣に見たり、聴いたりしているわけではないのに、一日中、テレビやラジオがつけっぱなしになって、画面や音が流れているといった状態があるのではないでしょうか。街頭に一歩でても、好むと好まざるとにかかわらず、さまざまな画面や音がわたしたちをつつんでいるように思います。
 このような環境の中でお子さんは育っているのですから「ラジオを聴きながらでも、問題が解ける」お子さんや「何か音が流れていた方が、問題がよく解ける」お子さんがでてきても、決して不思議なことではないのかもしれません。
 ここに一つの実験があります。ある数学のテスト問題を、Aクラスでは、今、中学生の間で最も話題になっている音楽を流しながらやらせ、Bクラスでは、静かな中でやらせてみたのです。その結果、単純な計算問題では両者の間には大きな差はでてきませんでしたが、式が入り組んだ応用的な問題になると、BクラスはAクラスよりよい成績になりました。Aクラス、Bクラスの条件をいれかえたり、国語や社会、理科の教科をいれかえたりしてみても、その結果はほぼ同じものでした。
 この実験によれば「ラジオを聴きながらでも、問題が解ける」「何か音が流れていた方が、問題がよく解ける」ということは、どのような。問題でも、どのような音でもというのではないということになります。つまり、問題の質によっては、また、音の質によっては、それを聴きながらでは、問題を解くことが困難になるというのです。

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 お子さんの場合には、友だちの間で話題になっている番組ということですから、それについてのお子さんの興味、関心は当然強いはずです。これを聴きながらの勉強ということになれば、お母さんの心配なさっているとおりの結果にたしかになると思います。
 友だちがみんな聴いているから自分も聴きたい、友だちとの話題についていけないから聴かなくては、というお子さんの気持ちも大切です。といって、みんながそれぞれに聴いている番組を全部聴いていたのでは、勉強の方も、能率の悪い、しかも、いいかげんな状態でダラダラと続ける結果となり、時間の浪費ということになってしまいます。
 ですから、ここでは、どうしても、みんなが聴いているからではなく、自分が本当に聴きたい、見たい番組を選びだして、それを聴いたり、見たりする時間と、勉強時間をはっきりと区別していくようにすることが必要です。
 ながら勉強が習慣化しかかっているお子さんにとって、ラジオやアレビを勉強時間には断ち切る、多少友だちとの話題に不自由しても断ち切るということは、かなり強い意志が必要なことでしょう。しかし、中学一年の今、このような習慣をつけておかなければ、高等学校に進んでも同じような非能率的な状態が続きます。けじめをつけて、今に集中するという大切な態度が育たないまま学年を重ねることになるのです。
 お子さんがラジオやテレビを勉強時間には断ち切るためには、それをお子さんだけの問題としてしまってはいけません。まず、家庭の中の状態がどうなっているかを家族全員で点検してみる必要があります。家族の一人ひとりが聴きたい番組、見たい番組が常にあるにしても、一日の中に音や画面の流れていない時間帯をつくりだしていく努力をしていくことが大切です。それは、決してお子さんの勉強を成立させることだけでなく、家庭の中に、いままでない能動的、創造的な生活をつくりだすことにつながるはずです。
 また、家庭で、どうしても、昨日の自分から今日の自分へ変えていくことができにくい場合には、図書館の自習室などを利用してみることもよいでしょう。図書館の自習室では、ラジオもテレビもありません。まわりの人たちも自分の勉強に専念しています。このような環境に身をおいて、自分の勉強に集中する感触を肌でおぼえるのです。
 図書館の自習室には常連といわれる中学生、高校生、大学生がいます。この人たちに聞いてみると、大半が家には自分の勉強部屋をもっているそうです。そういう人たちがなぜわざわざ図書館の自習室で勉強するのでしょう。それは、まわりの人たちの勉強の雰囲気が、自分の勉強への気持ちを引き立ててくれるからだというのです。きっと音にならない音を聴いているのかもしれません。これもある意味ではながら族になるのでしょうか。ぜひ一度、このような音をお子さまに聴かせて欲しいものです。
 はじめから、お子さんの意志と力だけで、ラジオとテレビを勉強時間から断ち切ることができれば、それに過ぎることはありませんが、無理にそうすることを押しつけても、かえって、勉強も友だちとの交流もだめにしかねません。人間だれしも自分一人ではできないことでも、まわりのようすがその方向を目指したものであれば、自然にそちらに向かって歩きはじめるものです。家庭の環境を変えたり、変わった環境を求めたりさせながら、集中の効果をお子さんに気づかせていくようにしてください。

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